ドアのノックはゆっくりと

札幌市の鍼灸院 快気堂鍼灸院白石で紡がれる物語

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鍼灸師にとって年収300万円は高いのか?低いのか?

      2016/05/02

鍼灸師にとっての「お金」

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前回は、鍼灸師とお金の話について書きました。

ざっと内容をまとめると、

・お金とは、「いいものをありがとう、がんばって続けてくださいね。」という感謝と応援の気持ちを代理するもの。

・我々鍼灸師は「質の高い良い治療」をすることで、この感謝と応援を得ているはず。

・そのため、「質の高い良い治療」を実現させるためにお金を使うべきである。

ということをお伝えしました。

本音で語る、鍼灸師とお金の話。 | ドアのノックはゆっくりと

今回は、その我々がお金を使うべき「質の高い良い治療」について考えてみたいと思います。

「質の高い良い治療」を実現させるためには、とってもお金がかかります。

質の高い治療に必要な3大要素

『質の高い良い治療』には次の3つの要素が不可欠だと思います。

・知識と技術

・仕事以外の時間

・精神的余裕

3つとも、お金と密接に関係してきます。

これらの要素が、どのようにお金が必要になるなのかをはっきりあぶり出すために、極端にお金が入らないモデルで考えてみたいと思います。

町で見かけるリラクゼーションマッサージの一般的な相場は10分で1,000円くらいになってます。

ここで、思い切って1時間で1,000円の鍼灸マッサージ店「安い堂鍼灸院」を始めたとします。

安く揉んでもらえるならと、多くの人が来るかもしれません。1日、目いっぱい10時間施術したとします。

施術時間ですから、事務作業や、お客さんをお迎えしたり、お見送りしたりする時間を抜いての時間です。休憩もなく、ご飯も食べる暇もなく、9時から19時までひたすら施術。それで1万円/日の売り上げになります。

週6で働くと、一月25日くらい働けますので、25万円/月の収入となります。

月収25万円というと、年収300万円。そこそこいいように思えます。

年収300万円の意味合い

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同じ、年収300万円でも、一般的なサラリーマンと鍼灸師の意味合いは随分違います。

一般には、年金や保険など、社会保障費的なものが自動的に引かれたものが給料として認識されていますが、鍼灸師はそうではないことがほとんどです。この収入から保険や年金、税金などを払わなければなりません。

ここで、一人の鍼灸師にかかるコストを考えてみたいと思います。

妻と子供が一人(3歳児)いる40歳の鍼灸師をモデルにしてみます。

国民健康保険が家族3人分で月に5万円ほどかかります。国民年金が妻と二人分で約3万円。公立保育園の保育料が約3万円。

合計11万円。これが、自動的に出て行きます。

ここから税金も払います。

さらに、

電話代(二人分で)約1万8千円。

家賃(5万円・店舗を含めると10万円〜)・水道光熱費(2万円・店舗を含めると4万円〜)は、自宅と治療院が別の場合は2倍かかります。

ここで既に、25万円を超えてしまいます。

鍼やお灸などの仕入れ代も必要です。

さらに、食費(切り詰めて3万円くらい?)や服代(子供は成長するのが早いので大変です)など、生活費がかかってきます。

子供におもちゃを買ってあげる余裕もありません。

こんな状態で、知識や技術を学べるでしょうか?

知識と技術と費用

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治療技術に関するレベルの高いセミナーや書籍は、非常に高価です。

私が通っている「整動鍼」のセミナーは1回の受講(二日間)で138,000円します。東京での開催なので、札幌からの旅費と宿泊代がさらにかかります。もちろん、それだけの価値があるから受講しています。

以前は、3,000円程度の講習会に参加していたこともあります。しかし、正直、物足りないと思っていました。

ある時、治療歴30年以上を誇る、地位のある先生がいらして、三千円で、『五十肩』の治療法について公演をしてくださりました。

この先生は、教科書通りの治療法を丁寧にわかりやすく解説してくださいました。要約すると、肩にあるツボを丁寧に探して、圧痛の強いところに鍼をしたり、灸をしたりするというものでした。当時の私の治療法とさほど変わりませんでしたが、ツボの正確さが違うのかもと思いました。

そして、最後に講師の先生が言いました。「五十肩は長くかかります。場合によっては2年かかることも。そのことを患者さんにうまく説明することが最も重要です」と。

当時の私は、そんなものかと思っていました。

しかし、その後、「整動鍼」のセミナーを受けてみたところ、上がらなかった「五十肩」が、一本鍼をするだけで上がるようになる技術と知識を習得することができました。

1回の受講で、30年の臨床経験を飛び越えてしまったのです。

138.000円は高いでしょうか?

3,000円は安いでしょうか?

もちろん、高額セミナー全てが素晴らしいわけではなく、怪しげなものも数多くありますし、逆に安いものにもいいものがあるでしょう。しかし、本物を見極める目を養うためにも、いくつかセミナーに参加してみるというのは大事ですし、それには、ある程度の投資が必要になります。

「安い堂鍼灸院」のやり方では、技術と知識に投資する余裕がありません。

仕事以外の時間

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セミナー代どころか、子供のおもちゃを買ってあげる余裕もない「安い堂鍼灸院」。

安さと、困っている人を見捨てられない院長の人柄から、お客さんだけは来るので、売り上げのために、深夜まで営業時間を伸ばすことにしました。

朝9時から深夜2時まで。さすがに1時間の休憩を2回入れました。施術時間は13時間。

月の売り上げは、325,000円になりました。

しかし、仕事が終わるとヘトヘトで、何にも手がつきません。日曜日も、疲れているのでほとんど寝て過ごしてしまいます。技術研修どころではありません。子供や奥さんの不満も高まります。

学ぶためには時間が必要です。ここでも、お金が関わってきます。なぜかというと、お金は時間と交換でるからです。

日本Microsoftの代表を務めた成毛眞さんは、本を読むための時間を確保するために、すべての移動をタクシーで行っているそうです。

1日2時間の移動にかかる時間を5000円で買っているのです。

同じように、治療院のHPなんかも、自分で作るより業者に任せれば、お金はかかりますが、時間が作れます。スタッフを雇う手もあります。清掃を業者に任せる手もあります。作ろうと思えば、時間は作れるのです。

上質なセミナーで30年分の時間を飛び越えるというのも、お金で時間を手に入れていることになると思います。

精神的余裕

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もし、明日までに、あと1万円ないと子供が保育園に行けなくなる、なんて状況で、良い治療ができるでしょうか?

この患者さんから、どうしたら一万円もらえるだろうか?なんて切実に思っている人に治療なんかしてもらいたくないですよね。

もちろん、不必要にお金を儲けようとするのも良くないですが、ある程度お金に余裕があった方が、お金のことを考えずに、目の前の患者さんに集中できるものです。

また、家庭の安定も、良い治療には大事です。

家族に会う時間も、支えるお金も足りなければ、いくら愛があっても苦しいことが増えます。

それを乗り越えるのも家族なんでしょうが、そちらにあまりにもエネルギーを使うと、良い治療どころじゃなくなってしまいます。

身近な人を笑顔にできないのに、多くの患者さんに笑顔になってもらえるはずがありません。

正のスパイラル vs 負のスパイラル

このように、「質の高い良い治療」を提供するためには、お金がかかります。

「安い堂鍼灸院」のように、あまりにもお金がないと、治療の質を上げることが難しくなってきます。

そうこうしているうちに、技術や知識に惜しみなく投資している人達に、どんどん差をつけられていってしまいます。

結果、本当に治療の必要な人が離れていき、ますますお金が入らなくなっていきます。

残念なことに、「安い堂鍼灸院」は極端なモデルではありません。

鍼灸師の平均年収は300万円と言われています。「安い堂鍼灸院」と同じ額です。

鍼灸師は食っていけないと、よく耳にします。

資格を取ったのに、鍼灸から離れていく人がものすごく多いです。

整形外科や整骨院で、信じられないような安い賃金で、鍼もさせてもらえず、リハビリ要員として朝から晩まで働かされている鍼灸師を見ると、胸が締め付けられる思いです。

鍼灸業界の課題

By: Legosz

技術がしっかりした鍼灸は、多くの症状に対して、他のどんな施術よりも優れた効果を出すことができると、実感しています。

それが、無資格マッサージよりも低い相場でいいのでしょうか?

個人的なことを言いますと、月商50万円以上あって、やっと、最低限の技術や知識への投資ができる感じがします。安定して70万円くらいないと、質の高い治療を保つのは苦しくなると思います。

鍼灸業界発展のためにも、開業したら、それくらいは得られるモデルを構築する必要があると思います。鍼灸にはそれだけの、いや、それ以上のポテンシャルがあると信じて、私も模索しています。

お金は全てではありません。だからこそ、お金を気にせず、治療に専念でき、感謝と応援を得られる環境を作るためにも、お金について真摯に考えることは重要だと思います。

若い人が鍼灸を目指し、夢を叶えられる業界であってほしいと思っています。

鍼灸はそれだけ素晴らしい治療だと、私は思っているからです。

札幌市白石区の鍼灸院:快気堂鍼灸院白石

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Comment

  1. 森田 より:

    初めまして。
    読ませて頂きました。
    売り上げと収入(年収)を混同されているふしがあります。
    例えですからそのへんのボカしはアリなのかもしれませんが
    人によっては誤解される方もいるのではないでしょうか。
    些細なことですが気になりましたので一言申し上げました。

    • kazuhiro より:

      森田さん、コメントありがとうございます。
      確かに、今回のブログでは、売り上げと収入の区別が曖昧になっています。
      ただ、今回のブログの趣旨は「よい治療に必要なものとはなにか?そして、どうやってそれが得られるのか?」ということをお金を絡めて考えてみたいと言うものです。
      ターゲットとして想定しているのは、これから鍼灸師になりたいと考えている人、独立を考えている、あるいは独立したばかりの鍼灸師、鍼灸師ではないけど仕事としての鍼灸に興味のある人でした。
      経営に長けている方には、当たり前の議論なので、あえてターゲットとしませんでした。そういう方たちには、違った形で意見をうかがえたらと思っています。
      会社経営ではもちろん、売り上げと収支は区別して考えるべきものですが、一人でやっている小規模な治療院経営においては、実態として「売り上げ≒収入」という部分があり、区別が曖昧になっています。
      もちろん、経営論として、区別するメリットはあるとは思いますが、それだけで結構な量の説明を必要とし、趣旨がぼやけてしまいます。
      それよりも、あえて、あいまいなままで、よい治療に必要なお金について考えた方が、シンプルでわかりやすいと考え、こういう形になりました。
      森田さんに、混乱を招いたのなら、申し訳ありませんでした。
      もし、よろしければ、これらを踏まえた上で、今回、売り上げと収支をきちんと区別していないことによって、どのような誤解が生まれ、どのようなデメリットがあるのかを教えていただければ助かります。
      今後の参考にさせていただきたいと思います。

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