ドアのノックはゆっくりと

札幌市の鍼灸院 快気堂鍼灸院白石で紡がれる物語

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ぶきっちょ鍼灸師のためのマーケティング入門〜鍼灸師のあぶない冒険④

      2017/06/24

前回までのあらすじ

学生時代の夢、「ぼくのかんがえたさいきょうのしんきゅういん」の実現へ向けて、必要なラインナップを揃え、自信たっぷりに構えていた谷地一博だったが、患者さんは減ったままだった。

廃業の危機が迫り、もがき続ける中で、繁盛している治療院のホームページを参考に自信のサイトのデザインに手を加えた所、新規の患者さんが増える。

かつてない手応えを感じた谷地一博は、繁盛治療院の人気の秘密の裏に「治療院マーケティング」と呼ばれる西洋伝来の錬金術の存在があることに気付いた。

前回のお話はこちら 鍼灸師のあぶない冒険〜③ぼくのかんがえたさいきょうの鍼灸院〜

マーケティングは悪?

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マーケティングという言葉に拒否反応を示す鍼灸師は少なくありません。「良い治療をすれば、患者さんは来るし、金儲けのための行動は悪」という考え方が、鍼灸師のダンディズムとされているところがあるからです。

自分も「マーケティング=悪論」の支持者でした。しかし、切羽詰まれば泥水をすすることも覚悟せねばなりません。

「生活が苦しくなれば治療の質にも影響を与えかねないし、なにより、より良い治療のための勉強ができなくなることは患者さんに対しての裏切りであり悪である」と、自分に言い聞かせ、私のマーケティング修行がはじまりました。

治療院マーケティングのプロローグ

幸運なことに、この頃、鍼灸院をはじめとする治療院業界に「治療マーケティング」なるものが、流行の兆しをみせ、情報が溢れかえっていました。

「治療院マーケティング」とは、アメリカで発展してきたマーケティング理論を、日本の治療院事情に合わせてカスタマイズした情報商材です。

氾濫する情報を、私はむさぼるように飲み込んでいきました。

どの情報にも、プロローグは大体同じ事が書かれてありました。

「腕が良いから患者さんが来るという時代は終わりました。腕に関係なく、マーケティング戦略を実行した者だけが繁盛治療院を手にし、腕があってもマーケティングを学ばない者は敗者として退場する時代となりました。治療に情熱を傾け、技術もある先生が、技術も無く宣伝だけがうまい治療院に負けていいはずがありません。本当に患者さんのことを考えるのなら、技術に優れた先生の治療院に患者さんを誘導してあげるべきです。やらない理由はありません。さあ、成功へ向けて加速しましょう!!」

治療家心をくすぐる文言です。大義名分を与え、マーケティングへの罪悪感をなくすことで、経営に困っている治療家が、すぐにでも飛びつきたくなるように、うまく出来ています。「治療院マーケティング」という情報商材を売り込むためのマーケティング、、、徹底してます。

これは期待できそうだと思いました。

Project 1、カウンセリングの見直し

まず着手したのは、初診時のカウンセリングです。

整動鍼・活法導入による治療技術の飛躍的な向上で調子に乗った私は、カウンセリングを極端に省略し、「次は必要だと思ったら来て下さい。」というゴッドハンド気取りの対応をしていました。

結果、リピート率は2割以下という状態になっていました。

それを、次の様に変更しました。

初診時に病院や他院との比較をしながら、当院の治療の特徴を知ってもらい、「なぜ当院に通院する必要があるか」を理解してもらう。

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さらに、治療計画を図を使ってお話しする。

快気堂治療法説明02 006

「1回目〜5回目までは、症状を安定させるために短めの間隔で通っていただき、徐々にそれを延ばしていきます。最終的には、1ヶ月に一回のメンテナンスで良い状態を保てるように目指していきます。」といった感じ。

医療に携わるものとして、悪くないのにメンテナンスで定期的に来院してもらうという事には、様々な意見があると思います。

しかし、さすがマーケティングです。次の様な免罪符がきちんと用意されています。

「素人である患者さんに判断を任せず、専門家が一生涯にわたって面倒を見てあげる事が患者さんのためである。悪くなってからだと治療回数が増えるが、悪くなる前にケアーできれば治療回数を減らすことが出来て、患者さんにとっても経済的である」と。

錦の御旗を手に入れた私は、「患者さんのため」に全力でカウンセリングに取り組みました。

結果、リピート率は8割以上へと上昇しました。

Project 2,料金と時間の変更

このときまで、料金は一律4000円でした。治療時間は一人1時間の枠をとっていました。

そう設定した理由は、「何となく」です。

他の治療院の料金を見ながら、高くもなく、安くもなくといったところを目安にしました。

マーケティング的にこの決め方はもちろん落第です。

マーケティング的な料金の決め方の一例として、「必要な料金を計算する」というものあり、私はそれを採用しました。

まず、大事なのは、一月にどれくらいの売上が必要かを考えます。あとは、営業日で割り、営業時間で割ったのが、必要な1時間あたりの単価となります。

勉強会・セミナーなどへかなり投資している当院の場合、1時間あたり6000円以上ないと赤字になる計算でした。

それを元に、料金を変更しました。

まず、1時間かかっていた治療時間ですが、整動鍼・活法の導入により、かなり短縮できるようになりました。余った時間は、治療成果とは関係ないおしゃべりの時間になっていました。そこで、一人あたりの治療時間を40分に変更しました。

次に、メニューを増やしました。治療に豊富な引き出しがある場合、メニューを沢山つくるべし、というのがマーケティング的原則です。

基本料金の上に、トッピングのように施術を重ねていくのは、患者さんのニーズに応えやすいし、こちらからの提案もしやすく、最初から高額な場合よりも、売上が上がるとされています(丸亀製麺や携帯電話のオプションの豊富さを思い出して下さい)。

それを踏まえた上で、次の様に設定しました。

一般はり施術 4320円

全身はり施術 (自律神経の調整など)5400円

活法整体 (はりと併用)1620円

活法整体 (単体・骨盤調整など) 3240円

お灸 (はりと併用のみ) 540円一般鍼治療は主に整動鍼による治療で、全身はり治療は整動鍼+経絡治療をやるイメージです。

予想以上の成果

カウンセリングを変更したのが2015年9月、料金変更は10月に実施しました。結果、10月に来院数、売上共に爆発的な増加が起こりました。

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▲10月は営業日が多かったのと、単価も上がったため、平均来院数の増加以上に売上が上がっています。9月の約2.5倍でした。11月、12月は新患の数が少し減りましたが、予約枠が満杯に近い状態が続き、お断りした事も多かったです。売上げも好調が続きました。

10月は息子の3歳の誕生日がありました。「誕生日プレゼントにニンニンジャーのロボットが欲しい」というリクエストをされる度に、「ゴメン、オムツ買うのも苦しいから無理だ、情けないパパだね」と心の中で何度もつぶやいていました。

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しかし、10月に売上が増え、なんとかニンニンジャーのロボットを買う事が出来ました。

貯金も無くなっていたので、唯一の贅沢となったロボット。その真新しい箱を抱きしめる息子と一緒に、私は喜びを噛みしめました。

そして、整動鍼・活法の勉強をお金による理由で中断しなくても良くなった嬉しさに、子犬のように打ち震えました。

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順風満帆の裏で

カウンセリングと料金、2つの変更だけで、予想の何倍もの成果が上がり、マーケティングの威力を思い知らされました。

まだまだマーケティング的に改善できるところはあります。「それを全部こなせたら、どうなっちゃうんだろう!?」と、期待と野望で胸を膨らませる一方で、1つだけ気になることがありました。

それは、整動鍼の提案者である栗原先生の動向です。

「栗原先生は、なぜ治療院マーケティングをやらないのか?」そんな素朴な疑問が、心のどこかに引っかかていました。

実はこの時、順風満帆な鍼灸師ライフを満喫している私の足下で、快気堂鍼灸院白石の船体は危険な軋み音を上げていました。この時は気付かなかったのですが、問題が表面化し、再び沈没寸前になった快気堂鍼灸院白石を救ったのは、この時の素朴な疑問でした。

つづく

つづき>>治療院マーケティングがもたらす恩恵とマーケティングのない世界〜鍼灸師のあぶない冒険⑤〜 

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