ドアのノックはゆっくりと

札幌市の鍼灸院 快気堂鍼灸院白石で紡がれる物語

*

治療院マーケティングがもたらす恩恵とマーケティングのない世界〜鍼灸師のあぶない冒険⑤〜

      2017/07/05

さいきょうの5本柱+α

前回までのお話

「ぼくのかんがえたさいきょうのしんきゅういん」を実現するための5本柱、

・医学部仕込みの西洋医学 ・日本全国の勉強会をまわって研鑽している東洋医学 ・多くの症状に即効性を発揮する整動鍼 ・運動器疾患から、美容、リラクゼーションまで応用可能な活法整体 ・第一人者に認められ、北海道の牽引役まで期待されている美容鍼

を揃えたものの、患者さんが激減してしまい、閉院寸前に追い込まれる谷地一博。

泥水をすする思いで、それまで嫌悪していた「治療院マーケティング」を導入。

「さいきょうの5本柱治療院マーケティング」は、予想をはるかに超える化学反応を起こし、患者さんの来院が激増。

危機を脱する。

ぶきっちょ鍼灸師のためのマーケティング入門〜鍼灸師のあぶない冒険④ 

マーケティング

まだ開拓の余地がある

「5本柱+マーケティング」がもたらした好調は、次の月も、その次の月も、そして年を越しても続きました。

快気堂鍼灸院白石2015年9月〜2016年2月の推移

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マーケティングで導入したのは、「カウンセリングの改善」と、「メニュー増加による料金改定」の2つだけでしたが、それでも一週間先まで予約枠が一杯になるという成果をもたらしました。

マーケティング的に、やろうと思えば出来ることはまだまだあります。

それを全てやったらどうなっちゃうんだろう?と得体の知れない興奮を覚えました。

さらに上とは?鍼灸師の現状

この時点で、一人でやっている鍼灸院としては、十分な来院数と売上がありました。

それでも、さらに上を目指したのは、鍼灸師の雇用という夢があったからです。

現在、鍼灸師にはまともな働き口が不足しています。

せっかくの国家資格である鍼灸師免許をとっても、活かせる場がないのです。

一見、町には治療院が腐るほどあるように見えます。

メディアを見ていると、健康情報が氾濫し、カリスマ医師や治療家が毎日のようにテレビに出演、健康産業も花盛りのように感じます。

しかし、そんな中で、はり治療をまともにさせてもらえる場は極めて少ないのが現状です。

鍼灸師は、はり治療が出来ない?

鍼灸整骨院はもちろんのこと、鍼灸院と謳っている所でさえ、鍼灸を治療の中心にしているところは多くありません。

悲しいことに、「はり治療は受けたいと思う人は少ない」という根強い信仰が鍼灸師にあって、「とりあえずマッサージでお客さんを呼んで、その中で鍼の良さを理解してもらい、必要な人には鍼をする」という戦略をとっている鍼灸院は少なくありません。

ところが、こういう戦略をとると、マッサージ目当てのお客さんばかりになり、鍼をする機会はほとんど無くなります。

手術数の少ない外科医と同じく、鍼の施術の機会が少ない鍼灸師は、鍼の技術が向上しません。

そうなると、いざ鍼治療が必要な人に施術しても、成果を出すのが難しくなります。

マッサージ中心店の憂鬱

さらに、マッサージ店(無資格のグレーなお店も含めて)の乱立で、マッサージの単価が下がっています。

単価が低いので、朝から晩まで、出来るだけ多くのお客さんを廻そうとします。それでも、経営的にギリギリの所がほとんどです。

免許取り立ての鍼灸師を雇用したとしても、じっくり教えている時間も資金もありません。付け焼き刃のマッサージもどきを短期間で教え、すぐに現場に出し、朝から晩までマッサージもどきばかりをさせざるを得ないのが現状です。

この状況を何とかしないと、鍼灸業界の未来はないと思っています。

雇用された鍼灸師が、鍼治療に毎日真剣に取り組むことができて、それが評価や、きちんとした報酬にも繋がっていく場をつくること。

鍼灸院の経営に自信が芽生えてくると同時に、新しい目標が見えてきました。

マーケティング街道を駆け抜けろ

具体的なマーケティング施策としては、次のようなものを採用していきました。

1,月一回、ニュースレターの発行

技術が向上し、施術時間が短くなると、患者さんとのコミュニケーションの時間が減りました。その埋め合わせをするためという目的ではじめました。

症状が改善した後も、生涯の健康パートナーとしてお手伝いさせて頂くためにも、自分や院のことをもっと知ってもらうことは重要です。有益な健康情報をお届けすることによって、院に来る楽しさやお得感も感じてもらう狙いです。

2,患者さんへのお便り

初めて来院された方へのお礼のお手紙、しばらく来院されていない方(マーケティングでは休眠患者さんといいます)へのお見舞いのお手紙、季節の挨拶のお手紙などを出しました。

マーケティングでは、患者さんがリピートしない理由のほとんどは「忘れている」から、とされています。

とにかく、何でも接触回数を増やすことで、忘れさせないような工夫が奨励されます。その代表がお手紙です。

3,SEO対策

Webサイトのデザインを、治療院マーケティングで有名なクド〇ン風に変えた途端、問い合わせが急増しました。真似だけでこんなに成果が出るのなら、本物に頼んだら凄い事になるのでは?と考え、実際にク〇ケンに相談したところ、SEO対策への申し込みを薦められました。

月に3万円近い出費になる上に、「一年間解約できない」、「効果は半年後まで待ってもらう」など、リスキーな香りが漂う条件を提示されましたが、好調な経営で調子に乗っていた私には「冷静に考える」というコマンドは表示されず、「ガンガンいこうぜ」しか選択肢がないような状態だったので、迷い無く契約書にサインしました。

4、キャンペーン割引

マーケティングの基本戦略にオファーバックヤードというものがあります。

オファーとは、「もう、これは行くしかない!」と顧客に思ってもらうための提案です。例えば、「初回半額」「お試し無料」「気にいらなければ全額返金」など。

「試してみたいんだど、自分に合わなかったらどうしよう?」と迷っている顧客の背中を押し、とにかく来店してもらうのが目的です。

バックヤードというのは、実際に売りたい高額な主力製品です。オファーでとにかく人を集め、カウンセリングで教育し、バックヤードを購入してもらう。これが、マーケティング思想のコアです。

治療院のバックヤードは、「高額なプリペイドカード」「長期間定期的に通ってもらう会員制への加入」などになるでしょうか。

ただ、これは、あまりにも自分の考える医療のイメージとかけ離れているので、自分の中で最も強い心理的な抵抗がありました。そのため、医療的なイメージとは離れている「美容鍼」で初回割引適用キャンペーンを試してみることにしました。

その他、店の前のブラックボード、チラシの作成、PPC広告などの準備も進めていました。

好調は続く、、、、が、。

ニュースレターや手紙は患者さんの反応が良く、キャンペーン価格での美容鍼も人気を博し、来院数、売上共に好調は続きました。

通常、1月・2月は売上が落ちるものですが、美容鍼が好調で、前の年の2倍以上の売上となり、4月には開院以来の最高来院数と最高売上を記録、5月には1日平均来院数が9.2人と過去最高を記録しました。

快気堂鍼灸院白石2016年1月〜6月の推移

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この世をば我が世とぞ思う望月の、、」と藤原道長の有名な和歌をつい口ずさんでしまうくらいに、調子に乗っていた私ですが、一つ気になることがありました。

それは、整動鍼の考案者である栗原誠先生の動向です。

栗原先生との会話

栗原先生は養気院という鍼灸院の院長をしています。

養気院は群馬県伊勢崎市の外れの、周りに畑しか無いような場所にあります。

それにも関わらず、常に予約が満杯の人気治療院です。

学生時代から、栗原先生と養気院に憧れていた私は、自分の院を作るときにも、養気院をメチャクチャ参考にさせて頂きました。

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▲憧れの養気院で栗原先生と

当然、経営的にも参考にしたくて、整動鍼・活法セミナーでお会いできるのを利用して、懇親会の時に色々質問を試みました。

例えば、こんな感じです。

谷地「先生、チラシって反応率どれくらいですか?」

クリ「チラシは出したことがありません」

谷地「?」

谷地「先生、患者さんへの年賀状はどれくらい出すんですか?」

クリ「年賀状は出しません、基本的に患者さんに手紙は出しません。」

谷地「?」

谷地「リピート対策ってどうしてますか?」

クリ「意識しないようにしてます。」

谷地「?」

谷地「患者さんに来てもらうために、やってることって何ですか?」

クリ「Webサイトとブログです。」

谷地「では、SEO対策ってどうしてますか?」

クリ「本当のSEO対策って、SEOを意識しないことなんですよ。」

谷地「?」

などなど。

あまりにも、自分が知っているマーケティングの常識と違いすぎて会話が噛み合わず、まるで禅問答のように感じました。

養気院に患者さんが来る理由

ルーク・スカイウォーカーが、ヨーダの謎めいた助言から何かしらのヒントを得ようとするように、栗原先生が患者さんを集められる理由を、栗原先生の言葉をヒントに自分なりに必死に考えてみました。

ヨーダ

まず、栗原先生には圧倒的な治療技術があります。

一度受ければ、他のとは違う凄さがすぐわかります。患者さんが思わず口コミしたくなるのも当然です。

次に、ネット上に蓄積された情報量の膨大さです。

栗原先生は、ホームページがまだ一般的ではない時代から自作のWebサイトを作り、ブログの黎明期からブログを書いています。

情報の蓄積量というのは、ネット検索ではかなり重要視される要素です。

鍼灸にからめた検索をすると、栗原先生が関係するページが結構な確率でヒットしてきます。

自分にとって問題なのは、これらの要素は簡単に真似できないということです。栗原先生の才能はもちろん、時代に恵まれたからこその方法論のように思えました。

カポスによる社会実験

同じ方法論で運営されている「はりきゅうルーム カポス」は、私が初めて訪れた2015年の3月の時点では、それほど患者さんが来ている印象はありませんでした。(現在は、患者さんが溢れる状態になっています。今だと信じられないことですが、当時は、当日の朝電話して午後1番の予約が簡単にとることができたのです。)

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▲2015年3月、カポスにて。秋澤院長とともに。

カポスは2014年に東京都港区(品川駅から3分という立地)に栗原先生が開院した鍼灸院です。「他の人が使っても、同じ結果がでて、はじめて本物の技術である」という栗原先生の信念のもと、整動鍼という治療技術の検証の場としての役割が与えられたカポス(栗原先生は、カポスでの治療はしません)。

畑の中にあり、自動車以外の通院方法が見当たらない養気院とは正反対の、都会のど真ん中という条件で、栗原先生流の経営スタイルが通用するかという社会実験の役割も担っていました。

カポス・養気院が患者さんを集めるために唯一力を入れているのがWebサイトです。

しかし、マーケティングを学んだ私の目から見て、カポス・養気院のWebサイトのデザインは地味すぎる印象でした。

「こんなので大丈夫なのだろうか?なぜ、栗原先生はマーケティングを学ばないのだろう?鍼灸師としての信念にこだわりすじゃないだろうか。治療の技術は日本で、いや、世界でもトップクラスなのだから、マーケティングさえしっかりすれば、とんでもないことになるはずなのに」と、私は思っていました。今考えると、無知とは恐ろしいものです。

そして、栗原先生がやらないのなら、「整動鍼+マーケティング」という新たな方向性を自分が開拓し、成功させ、整動鍼普及のために貢献したいなどという誇大妄想をしていました。

袋が破れる音

当然のごとく、栗原先生がマーケティングを知らないわけがありません。そうではなく、一般的なマーケティングの常識とは違った新しい方法論にチャレンジしていたのです。

整動鍼を知れば知るほど、今までの治療法とはかなり違った性格を持っている事が解ってきます。

「新しいぶどう酒は、新しい革袋に入れるものだ」とジーザス・クライストが言うように、全く新しい治療技術である整動鍼のポテンシャルを最大限に発揮させるためには、治療院の新しい経営スタイルが必要だったのです。

快気堂鍼灸院白石は治療院マーケティングという古い袋に、整動鍼という新しいぶどう酒を入れてしまったのです。

その結果、大きな音を立てて古い袋が破れ始めました。

私は再び、来院数・売上ともに半減するという試練に直面することになりました。

つづく

つづき→治療家の絶対正義「患者さんのために」は3種類あるのか〜!?。

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