ドアのノックはゆっくりと

札幌市の鍼灸院 快気堂鍼灸院白石で紡がれる物語

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リピーターを作るのは治らないヒトを作っている!?〜鍼灸師のあぶない冒険⑦〜

      2017/07/28

復習・「患者さんのために」は3種類ある

「患者さんのために」は次の3種類があるのではないか、という記事を以前書きました。

1,できるだけ早く痛みや症状を取り除くこと

2,できるだけ長く身体の不足要素を補うこと

3,日常のストレスを忘れる時間を提供すること 患者さんのために3種類

現代は2の「補うこと」を治療目的の中心にすえる治療院が圧倒的多数を占めます。

患者さんは色々な目的を持って治療院を訪れます。その患者さん達の欲求を2の「補うこと」に上手に誘導していくことが、治療院マーケティングの基本であり、核を成す部分です。

当院も、1の「取り除くこと」を強烈に意識しながらも、やっていることは2の「補うこと」が中心となっていました。

至福の悦びと副作用

しかし、整動鍼を導入して変化が起きます。

整動鍼の技術が習熟するにつれて、施術して「あ、治った。」と私と患者さんが同時に感じる至福の瞬間が、次々と生まれるようになっていきました。

この瞬間の得も言われぬ快感は、他の何物にも代えがたいレベルのものです。鍼灸師になって良かったと心の底から思える瞬間です。

Sea beach holiday vacation

一方で、副作用も生まれました。

マーケティングの基本通り患者さんにリピートを促して通ってもらうのですが、一度治ってしまったら、1ヶ月間隔を空けても、2ヶ月間隔を空けても症状が全く出ないことが増えていきました。

危険思想の芽生え

生涯の健康パートナーとして、末永く患者さんの身体を診させてもらうことの喜びも知っています。

しかし、あの「あ、治った」を共有し、喜びを分かち合う快感には遠く及びません。

一度あの快感を知ってしまうと、その後だらだらと通ってもらうことに罪悪感を覚えてしまうようになりました。

私の中で「あ、治った」だけを目指す日々を送りたい、という欲求が日増しにムクムクと大きくなっていきました。

しかし、そう簡単にはいきません。

「あ、治った」だけを追求するということは、患者さんのリピートに依存せず、「治ったら終わり」という経営スタイルに移行することを意味します。

「治ったら終わり」スタイルは、治療院マーケティングにとって、最もやってはいけない危険思想とされているのです。

Pexels photo 340926

私も整動鍼・活法に出会ったばかりのころ、「治ったら終わり」スタイルに手を出して、来院数・売上ともに半減するという大やけどを負っています。

このスタイルで成功した治療院は、ほとんどないのが現状です。

なぜなのでしょう。

なぜ、「治ったら終わり」はうまくいかないのか

主な理由はコストです。

治療院マーケティングでは、新規患者さん獲得には高いコストが必要だが、リピーターは低いコストで来院してもらえると考えます。

千枚配って問い合わせが1件あれば優秀とされるチラシ、競争が激化するなかで価格が上がってきているネット広告、数十万かかる雑誌掲載などなど、一人の新規患者さんに来院してもらうための広告費というのは、膨大なコストがかかります。

一方、一度来院していただいた患者さんに、リピートの重要性を訴えたり、手紙を書いたり、院内だより的なものを渡したり、健康教室を開催するなどしてリピートを促す方が、低コストで大きな成果が出るのです。

苦労して集めた新規さんをすぐにでも手放してしまおうとする「治ったら終わり」路線は、超高コストでハイリスクな選択なのです。

うまくいく治療院がほとんどないのはそのためです。

Pexels photo 488835

LTV

治療院マーケティングには、LTV(ライフタイムバリュー)という言葉があります。

LTVとは、一人の顧客が生涯でどのくらいお金を払ってくれたかを示す数値です。

リピートを増やすということは、LTVを上げることとも言えます。

いかにLTVを上げるかが、治療院マーケティングの至上命題とされています。

LTVをあげることを治療院経営の中心に考えると、次のモデルが理想像として浮かび上がってきます。

・広告や値引きなどを駆使し、はば広く患者さんを集める

→メンテナンスの重要性を教育してリピートを促す

→心理テクニックを活用し、放っておいても来院するくらいのファンになってもらう

→優良顧客には特別扱いで自尊心を満たし、お勧めする高額な商品を率先して買いまくるくらいの信者になってもらう

→儲けたお金を広告費に大量投入する

→最初に戻る

違和感

この頃私は、治療院マーケティングへの違和感が日に日に強くなっているのを感じていました。

違和感は次の3つの点で特に強く感じていました。

1,LTVを下げるのが医療ではないか。

常に健康に不安を抱え、生涯施術を受け続けるというのが、本当に健康的と言えるでしょうか。

施術や検査を受けるより、趣味や家族、仕事など、自分の人生にとってもっと重要なことが患者さんにはあるはずです。

時間やお金は有限です。どうせならより大切なことのために使って欲しいと、私は思います。

さらにいうと、家族や仕事、趣味など人生にとって重要な事のために不調を治すのであって、不調がなければ医療は不要なはずです。

医療とはLTVを下げるのを目指すべきものではないでしょうか。

 

2,リピーターを作るのは、治らないヒトを作る。

もちろん症状によっては、定期的な治療が必要な方もいます。

しかし、そうではない人にまでリピートを促すというのは違和感しか感じません。

精神科医の名越康文さんがインタビューでこう語っていました。

「依存心は病気のもとですから、かえって病気を長引かせてしまうかもしれません。(中略)患者との関係性について絶えず試行錯誤して悩み続けてきました。ー医道の日本2017年1月号ー」

信者化はもちろん、リピーター化、ファン化は患者さんの依存心を強めてしまう危険性があります。

術者に対する依存心が強くなりすぎると、患者さんの症状がいつまでも改善しなくなるということが頻発します。

怖いのは、その方が経営面で喜ばしいということです。

リピーター化、ファン化、信者化というのは、患者さんが施術者に依存すると同時に、施術者が患者に依存する関係性を作り出してしまいます。

治らないことを喜ぶのは医療者として個人的に受け入れがたいものがあります。

3,マーケティングが行き着くところは結局、、、、

マーケティングは心理学が元になっています。

例えば、webサイトのボタンの色を青や赤ではなく緑にするとなぜかクリック率が上がるなど、使われる色や文字で、ユーザーがどのような心理状態になるかまで研究され、利用されています。

マーケティング的に最も有効な心理ツールは不安です。

”無料キャンペーン限定〜名様”とあると、今申し込まないと損をしてしまうのではないかと不安になります。

”メンテナンスしないと、また痛くなりますよ”と言われると、不調がなくても不安になってきます。

不安は理性を抑え込みます。

損したらどうしよう」、「悪くなったらどうしよう」と、不安で頭がいっぱいになると、落ちついて考えることが出来なくなり、いつのまにか思いもよらない高額な商品を購入してしまったりします。

Fanned us dollars 4460x4460

不安で理性を失わせる手法だけみると、個人的にオレオレ詐欺と変わらない気がしてしまいます。

違うのは、治療成果というきちんとした商品があるところと、「患者さんのために」という大義名分があるところくらいでしょうか。

偏る事情

鍼灸をはじめとする東洋医学の技術は、「できるだけ長く身体の不足要素を補うこと(患者さんのためにの2)」を得意としています。そのため、東洋医学系の施術は、LTVを上げることを目的としたマーケティングとの相性が良く、マーケティング施策のスムーズな導入が可能で、金銭的にも結果を出しやすい特徴をもっています。

経済的な安定が見込めるため、自然と2の「補うこと」に注力する治療院が多くなるのです。

当院も2の「補うこと」を中心に据え、マーケティングを導入し、来院数・売上とも想定以上の成果をだしていました。

成果が出ていたし、患者さんも喜んでいたので、マーケティングに対する違和感も薄らいでいました。

しかし、整動鍼を導入し、「あ、治った」の快感を知ると、マーケティングに対する違和感が膨らみ、我慢できなくなりました。

もう一度「治ったら終わり」スタイルに挑戦したい。

理想と現実の狭間で

けれども、理想は理想で、食べていけなければ続けられません。

ほとんどの人がなし得ていない「治ったら終わり」スタイルで、自分は結果を出すことが出来るのだろうか。

多少悩みはしましたが、心は決まっていました。

なぜなら、お手本がいたからです。

整動鍼の提案者、栗原誠先生が運営する群馬の養気院と東京都港区のカポス

この頃、養気院はもちろん、カポスも数年前とは比べものにならないほど来院数が増えており、スタッフの増員が始まっていました。

マーケティングに依存にしないスタイルで結果を出している鍼灸院が目の前にあるという現実。

治療の技術も共有させてもらっているし、相談出来る関係性でもあります。

だとしたら、理想に挑戦しない理由はない、と思いました。

そして断捨離へ

溢れ出る想いに歯止めが利かず、マーケティング的に無謀とされるあぶない挑戦を2016年9月にスタートしました。

まずはじめに取りかかったのは、断捨離でした。

「治ること」に必要のないものは、全て整理しよう。

美容鍼、不妊治療、自律神経失調症治療など、大きな利益を生み出していたものを全て捨てました。

すると、患者さんも断捨離されてしまい、来院数・売上がまたしても半分になってしまい、快気堂は再びピンチを迎えます。

次回は、この断捨離祭りについてお伝えしたいと思います。

つづき≫断捨離しすぎて廃業寸前になった話

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