(4)のつづき
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経絡治療の活躍
経絡治療を中心にした施術はそれなりの成果を出していました。
この時の私は、逆流性食道炎、鬱症状、不妊、パニック障害、自律神経系の症状、抗がん剤治療による副作用のケアなどを得意としていました。
これらの患者さんは、短期間での劇的な回復は期待できないと考える方が多く、長く通っていただける前提でいらっしゃるので、経営的な面でも支えとなりました。
成果が患者さんを呼び込む、が、
成果が出てくると、紹介などで患者さんが増えてきます。自分の得意な症状を紹介されるかと思いきや、相談される内容は、肩こり、腰痛、膝痛など運動器疾患系に関するものが大多数を占めました。
それは、当然と言えば当然で、前にも触れましたが、日本人が悩む身体の症状は、腰痛、肩こり、膝痛、頭痛が圧倒的に多いのです。
厚生労働省 国民生活基礎調査(平成25年)より
そして、それらのほとんどが、病院の治療では解決できていません。例えば、腰痛で病院を受診しても、原因がわかるのは2割以下と日本整形外科学会がデータを発表しています。
医学では原因がわからなければ治療できませんので、痛み止めや湿布、筋肉を弛緩させる薬、などで対処せざるを得ないのが現状です。それで良くなるケースはまれなので、患者さんは病院以外の施術を探し求めることになります。
このように、元々の数が圧倒的に多いので、相談が増えてくれば、肩こり、腰痛、膝痛の割合が多数を占めてくるのは至極当然のことです。
ウィークポイント
しかし、ここで問題が起きます。
経絡治療を中心とした私の施術は、運動器疾患系が苦手だったのです。
経絡治療のメインは身体の根本の力を回復させる本治法です。
例えば、腰痛だったとしても、腰に治療をするのではなく、経絡に問題があると考え、腎の経絡に異常があれば腎の経絡、肝の経絡に異常があれば肝の経絡の回復を目的とした施術をします。
結果、問題のあった経絡が復調すれば、身体の自然治癒力が甦り、腰痛も自然と回復していくはず、という流れになります。
身体にとって無理のない、とても美しい治癒への道筋ですが、結果が出るまでには、どうしてもタイムラグが生じます。
そのため、患者さんが一回の治療で得られる感覚は、「なんとなくいいかもしれない」状態なことがほとんどです。それを2回、3回、、、10回、、、と回数を積み重ねていくことで、「おかげさまでだいぶ良くなりました」状態となっていきます。
これは、腰痛患者さんが、勇気を出して選択した鍼治療のイメージに答えていることになるでしょうか?
メリットの落とし穴
経絡治療は、身体に無理をさせない素晴らしい施術法だと思います。
患者さんのメリットとしては、次のようなものが考えられます。
・痛みが少ない、むしろ心地よい刺激。
・受けた後、すっきりとした爽快感。
・身体にとって無理のない治療で、長い時間と回数を必要とするが、自然治癒力や免疫力などの身体の力が回復する。
・ゆったりとした時間が流れ、日常では得られない深いリラックスタイムを過ごせる。
・五行によるタイプ別診断が、占いみたいで女子のハートをくすぐる。
などなど。
どれも、鍼が怖いというイメージとはかけ離れ、多くの人に受け入れられ易そうなものが並んでいます。
しかし、このメリット、よく見ると、他のマッサージやエステなど、巷に溢れるリラクゼーション系のものとほとんど変わらなくなってしまっています。
治療を提供する側の意識は、もちろん全然違います。長期的な結果も全く違うと私は信じています。
でも、受ける側、特に初めて鍼を受けてみようとしている人にとって、上のようなメリットを強調されたらどうでしょう。安心はあると思いますが、鍼でなければならない理由に乏しいのではないでしょうか?
通っていただくために
結果が出るまで時間がかかるとしたら、患者さんに通ってもらうために、結果が出ることを信じてもらう必要があります。
経絡治療の診断方法が脈診のみで、術者はわかっても、患者さんにはわかりにくいという事も、結果が出る前から信じてもらう必要性に拍車をかけています。
そうはいっても、一回一回料金が発生するわけです。腰が痛いのに「なんとなくいいかも」程度で帰ってもらうのは、ここに来る理由としては弱いし、こちらも申し訳ない気持ちになります。
そこで、来院された際の満足度を、他の要因で上げよう!と思うわけです。
・リラックスして過ごせる空間作り
・お得感が得られるように、健康情報やセルフケアが掲載された配布物を配る
・いつも笑顔で、元気な雰囲気
・アロマや、気持ちよいマッサージなど、他のメニューの充実
・カウンセリング技術を上げ、主訴以外のお悩みも相談していただき、心のケアも重視
などなど
もちろん、身体や心のストレスを取り除き、自然治癒力や免疫力を高めていく長期的な戦略としては、素晴らしい施策だと思います。
しかし、どうでしょう、他のリラクゼーションの利点とますます被ってきていないでしょうか?
患者さんに、「快気堂でなければならない」と思っていただくためには、これらの要素が他より飛び抜けて優れている必要があります。リラクゼーションは非常に数が多くなっています。大手もたくさん参入していますし、これからも増えるでしょう。
資金が少なく、閉院しかないのか?とあがいている弱小鍼灸院が勝てるはずがありません。
戦略の大幅な変更が必要です。
vs 名人
By: OiMax
経絡知慮の本治法も熟達すれば、効果が出るまでのタイムラグをなくすことができるかもしれません。
しかし、経絡治療は古くから人気がある鍼灸スタイルです。すでに熟達した達人が数多くいます。首藤先生のような歴史的な大名人でなくても、それなりのビッグネームは札幌にも存在します。その人達に、今からすぐに肩を並べることなんて、不可能です。
突き詰めて考えれば、患者さんにはそこを紹介してあげた方が、真摯な態度かもしれません。
「快気堂でなければならない理由」が全くありません。
標治法という解決策
こういった場合、本治法に対して、患部をとりあえず治療する標治法という考えがあります。
ですが、経絡治療では位置づけが、
本治法>>>>>越えられない壁>>>>>>>>標治法
なため、様々な勉強会や講習会に参加してみましたが、標治法について詳しく教えていただける機会はなく、むしろ、熟達すればするほど標治法を蔑視する傾向があるため、私の欲しい解答は得られそうにありませんでした。
結局、標治法は自分で工夫するしかありません。
鍼は痛いところにとりあえず刺しとけば、鎮痛効果が働き、一定の効果が出ます。後は、痛む箇所や筋肉を正確に捉える触診の技術や、解剖的な知識を高めていく事で差をつけていくしかありません。
しかし、この方法では、一定の効果は出るものの、効果が持続しないのが、科学的にも証明されてしまっていますし、臨床でも実感します。
結局、来たときはいいけど、また痛くなるので、一週間ごとに通ってもらいながら、本治での回復を待つ作戦をとることになります。
加えて、痛むポイントや原因となる筋肉を触診で見つけ出し、鍼を刺すのは、それほど特別な技術や知識を必要としません。
リラクゼーション的なマッサージが主体で、付け足し程度に痛いところに鍼をするだけのような、鍼の技術に重きを置かないタイプの所でも、何年かやっているうちに出来るようになってしまうレベルのものです。
「快気堂鍼灸院白石でなければならない理由」としては、武器にならないのです。
ピンチの中、理想の施術法が見えてくる
このように、経絡治療を中心とする施術方法はとても素晴らしいものですが、「快気堂鍼灸院白石でなければならない強烈な理由」にはなっていませんでした。
ただ、弱いところがはっきりすれば、必要な施術法の姿が見えてくるものです。
おぼろげながら、次のような施術が理想だと考えました。
・運動器疾患系に強い
・はっきりとした効果が、患者さんにもすぐわかる
・鍼だからこそ効果がだせる
・他の治療法にはない特徴がある
・群を抜いた効果
・出来るだけ早く習得できる
・できれば、誕生したばかりで、熟達した競合があまり存在しない
さて、そんな都合の良いものがこの世に存在するのでしょうか?もしそんなものがあったら、もうみんなやっているはずじゃないでしょうか?
でも、もし、そんなものに出会うことが出来たなら、このジリ貧な状況を一気に逆転できる奇跡を起こせるはずです。世界に唯一の秘宝「快気堂でなければならない理由」を手に入れるため、存在するかもわからない、理想の施術法を求める冒険がこの時始まりました。
つづく、、、、(6)
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