(14)の続き
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冒険で得たもう一つの宝物
2015年の10月は、忘れられない月になりました。10月の初め、預金残高が、その月のカードの返済、経費、家賃、光熱費の支払いをするとマイナスになるところまで、追い詰められていました。
そんな状況でしたが、とにかく、24時間、目の前の出来ることに精一杯集中することに努めました。そうすることで、不安を感じる隙を作らないようにしていました。特に、メンタルが強いワケでもない私に、これが出来たのは、冒険先での数々の出会いのおかげだと思います。
快気堂鍼灸院白石を沈没の危機から救うために出航した冒険は、整動鍼・活法を中心とした「快気堂鍼灸院白石でなければならない理由」というお宝の他に、多くの鍼灸師との出会いを私にもたらしてくれました。
理想の鍼灸を求める旅ですから、鍼灸への愛が強く、鍼灸の可能性を本当に信じている鍼灸師との出会いが自然に多くなります。
鍼灸は一般的にはまだまだマイナーなジャンルです。
彼らの、自分たちが感じている鍼灸のポテンシャルと世間の温度との差に、悩み、うちひしがれながらも、果敢に挑戦していく姿に、自分もやらなくちゃ!と随分と刺激を受けました。
成功者に共通する9つの特徴
また、冒険の中で、鍼灸師でも一握りしか存在しないレベルの成功を納めた人達にも出会いました。
彼ら、彼女らには、次のような共通した特徴を感じました。
・とにかく、良いと思ったことはすぐにやってみる。
・うまくいかなくても、言い訳をせず、改善点を見つけることに力を注ぐ。
・結果が良いと判断したら、しつこくしつこく、徹底してやり続ける。
・普通かどうかを気にしない。逆に、異端であることを個性として強みにしている。
・個人を超えた大きなヴィジョンをもっている。
・常にチャレンジしていて、守りに入らない。
・暇を見つけると、作業している。
・尋常じゃない仕事量
・自分を変えることに躊躇しない、むしろ変わっていくのを成長として楽しむ
成功したくない?人の言い分
私を含め、うまくいっていない人には、逆の特徴を強く感じます。この辺がヒントになる気がしました。
そうはいっても、めんどくさがり屋で、ぼーっとしている独りの時間が好きで、なのに、子育てでただでさえ自由になる時間が削られている現状で、成功している人達の真似は、自分には無理だと思っていました。
しかし、ぎりぎりまで追い詰められ、私は変わらざるを得ませんでした。
不安をいくら大きくしても、治療技術が上がるわけでもないし、患者さんが来てくれるわけでもありません。もちろん、全部は無理ですが、「でも〜」「そうはいっても〜」を封印し、とにかく、今できることに全力を注ぐことに集中しました。
どん底の充実感
「金がないなら、頭を使え。頭がないなら、とにかく手を動かせ」という有名ブロガーの永江一石さんの言葉を呪文のように唱えながら、出来ることから一つずつ取り組んでいきました。
そうすると、不思議と不安が小さくなりました。現状が最悪なのは変わらないのにです。正確に言うと、不安を感じる暇が無くなりました。回復の兆しが見えなくても、まだやれる事は山ほどあり、それを一つずつこなしていくだけしかない、と思えるようになりました。チャレンジを続けるうちに、スポーツのような充実感さえ感じるようになりました。
9月まで低迷を続けていた売り上げは、10月に一気に上昇しました。回復どころか、気づいたら、週休2日の一人鍼灸院としては到底無理だと思っていた数値の壁を突破していました。
ゲキアツダイオー
10月は、息子の誕生月です。心配していた支払いもめどがついたので、息子が欲しがっていた、ゲキアツダイオーのおもちゃ(約8,000円)をなんとか買うことができました。ゲキアツダイオーの箱を大事そうに抱える息子の姿を見て、嬉しさで涙がちょちょぎれました。
10月の結果が予想以上に良かったので、半信半疑な部分もあったのですが、11月も同じレベルの結果が出ました。その後も、多少の上下がありながらも、勢いは変わらず、2016年4月には最高記録をさらに更新、去年を考えると信じられないくらい良い形で4年目に突入することが出来ました。
目標達成して得られるモノ
閉院寸前のときは、目標が叶えば、幸福感で満ち足りるだろうな〜と予想していましたが、達成してみると、案外そうは感じませんでした。むしろ、新たな切迫感が生まれました。
まず、強烈に思ったのは、「もっと、学びたい」ということでした。
好調が続いているとううことは、多くの患者さんに選んで頂いているということです。
患者さんの信頼と期待に応え続けるためにも、治療技術の追求は最重要課題だと考えています。
感謝は、言葉やモノではなく、治療で返すのが治療家のあるべき姿だと思っています。
マイナーからメジャーへ
次に、「この優れた鍼灸という技術をもっと普及させたい」と強く感じるようになりました。
鍼灸は、まだまだマイナーなジャンルです。
鍼灸師の資格を取っても、働き口が全然ありません。働けたとしても、まともに鍼を打たせてくれる職場はほとんどなく、医療機器のスイッチマンや、モミ屋さん、医師をはじめとする他の医療資格者の御用聞きとして、低賃金で長時間働かされる有様です。
こんな状況だと、鍼灸業界の発展なんて夢のまた夢だと思います。
これを何とかするために、法律の改正や、医師を中心とした地域医療チームへの参入などの方向性で、涙ぐましい努力が続けられています。が、この正攻法によって結果が出るのは、まだまだ遙か先のような感じです。
この国のシステム
これは、ぶっちゃけて言うと、鍼灸師に経済的、政治的力が圧倒的に不足しているのが原因であると思っています。
経済的に余裕のある団体が、政治的にも発言力が強く、無理が通って道理が引っ込むような活動を政府が容認している現状を見るにつけ、憶測がヒリヒリとした実感を伴った確信へと変わりつつあります。
こういったシステムに愚痴をこぼしていても何も変わりません。
打破するためには、鍼灸師が、医療者としての立場的にも、経済的にも、独立した確固たるものを築く必要があると思います。
具体的には、
・鍼灸師なら誰もが再現可能でありながら、他の医療にはないはっきりとした効果と特徴をもつ治療技術の普及
・経済的にも成功した鍼灸院の大量増加
・看護師に劣らない賃金を約束される雇用の場の創出
といったことが実現されれば、鍼灸師業界どころか、世界の医療にも革命的な貢献が出来ると思っています。私は鍼灸にそれだけのポテンシャルを感じています。
言葉では簡単ですが、そこに至る道を考えると、焦燥感と不安で押しつぶされそうになります。そんなときこそ、一歩でも良いので、今できることを精一杯やるのが、唯一の目標達成に至る道だと思っています。
4年目の目標
目標に向かって、私に今できることを考えると
・技術としての整動鍼の追求と普及活動
・整動鍼を中心とした鍼灸院経営の仕組み作り
・スタッフの雇用
となり、これを快気堂鍼灸院白石、4年目の目標としました。
鍼灸院を潰れかけさせた自分には大それた目標だと思いますが、不安を紛らわすためのネットサーフィンに明け暮れるくらいなら、とにかく手を動かして、一歩を踏み出してみたいと思います。
今は、信頼してくれている患者さんがいます。近い想いを抱く鍼灸師仲間もいます。なによりも、冒険にチャレンジし続けることが、成長をうながし、出会いを生み、人生に秘められた喜びをもたらす事を学びました。
長い冒険の果てに
1ヶ月半にわたり、鍼灸をめぐる1年間の冒険について、お伝えしてきました。
5回くらいの予定でしたが、大幅に拡大して15回となりました。読んでくれる人がいるんだろうかと思いましたが、数は多くないですが、熱い応援を頂くことも出来ました。感謝です。
結論として、週刊少年ジャンプ魂フルスロットル的で恥ずかしいのですが、次のセリフに集約して、終わりたいと思います。
「冒険はまだまだつづくぜ!!」
鍼灸をめぐる冒険(7)高額医療機器がやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!
鍼灸をめぐる冒険(12)一夜にしてゴッドハンドに!!そのワケは、、。