(9)のつづき
患者さんが激減し、売り上げも半分となり、貯金の残高がカウントダウンのメーターのように減っていく中、ネットサーフィンに現実逃避していた私。
ある時からクリ助という人の「鍼灸師のツボ日記」というブログばかりを読むようになっていました。
「鍼灸師のツボ日記」との出会い
実は、「鍼灸師のツボ日記」との出会いは古く、10年ほど前、私が鍼灸学校の生徒だった頃までさかのぼります。
定職にも就かず、ブラブラしているうちに30代になってしまった私は、鍼灸師である親の強いすすめ(半ば強制)で鍼灸学校に入学しました。
30代というと、大人の階段も登り慣れてくる頃のはずですが、中二病をこじらせていた私は、父親への反発心が未だに抜けていない恥ずかしい輩でした。そのため、父の職業である鍼灸師に対して良いイメージを抱いていませんでしたし、正直、興味もありませんでした。
鍼灸学校時代の私
しかし、鍼灸学校に通うことになり、毎日鍼灸に触れる生活になると、さすがに鍼灸師に対して興味なしというわけにはいかなくなります。鍼灸師ってどんな人種なのか、全くイメージが無かったので、ネットで情報を漁るようになりました。
「鍼灸師のツボ日記」は、まだブログが黎明期の頃から書かれている老舗ブログであり、鍼灸関係について検索すると、高い頻度で上位に表示される人気ブログです。
他のブログは、難解な理論を大仰に語り続けるものか、あるいは、「今日はこんなランチ食べました」みたいなどうでもいい情報が多いものばかりだったのですが、「鍼灸師のツボ日記」は、等身大の鍼灸師の姿が親しみの持てる文章で綴られていて、鍼灸が本当に好きで、鍼灸師であることが嬉しくてしょうがない、そんな雰囲気が伝わってきました。
柔らかいけど、すごく尖ってる
クリ助の本名は栗原誠先生といいました。栗原先生の鍼灸院は養気院という名前でした。
群馬県の鍼灸院 - 鍼灸(はり きゅう)養気院|群馬県伊勢崎市
ただ、よく読むと、穏やかな印象とは裏腹に、栗原先生のやっていることはかなり尖っいて、それもブログの魅力になっています。
例えば、
・鍼灸マッサージ師でありながら、大好きな鍼灸だけをやりたいので、鍼灸学校を卒業して就職した整形外科や整骨院の仕事をマッサージばかり求められるという理由ですぐに辞め、独立開業した。
・独立開業したが、コネもつても無く、患者が来ず、水道を止められるほどの極貧生活、それでもマッサージはやらない。
・そんな状態で、自分の理想の鍼灸治療を実現するには場が必要だと考え、大借金をして、群馬のすみっこに特殊な工法で鍼灸院を建ててしまう。
・広告にお金をかける姿勢が嫌いだから、チラシや広告は一際せず、自作のWebサイトのみでの集客。
などなど。
普通は、生活のために妥協してしまうようなポイントを一切曲げず、大好きな鍼灸を追求する姿勢に、素直に鍼灸師としてカッコいいと思いました。そして、開業後、2年経ち、3年たった頃、養気院は予約が取れないくらい繁盛するようになります。
この活躍ぶりに、まるで、私は自分が成功したかのような興奮を覚え、夢中になってブログを読み、栗原先生のような鍼灸師になりたいと思うようになりました。
裏切り
しかし、2008年頃から、事態が一変します。
「鍼灸師のツボ日記」に異質な話題が増えて来ました。
それは、「活法」という耳慣れない整体術についてのもでした。
戦国時代から伝わる、日本独自の整体術「活法」。武術の「殺法」の裏技として発展した「活法」は、戦場で動けなくなった兵士、あるいは、武術の稽古中にけがをしてしまった者を動けるようにするために研究された整体術です。戦場での使用が想定されているので、秀でた即効性が大きな特徴です。
栗原先生は、まるで、新しい恋人にでも出会ったかのように、嬉々として活法について綴るようになっていきました。その姿に、私は「裏切られた」という思いを抱きました。
鍼灸に惚れ込み、いろんな者を犠牲にして、どんなに苦しくても鍼灸のみを追求してきたのに、なぜ、今になって整体なのかと。
片思いの失恋
マッサージならいざ知らず、整体は国家資格も無い無法地帯、怪しげなもので溢れている印象を私は持っていました。
また、栗原先生は、活法は、今までの鍼灸治療に欠けていた、運動器疾患に対する即効性の部分を補うものになると考えているようでしたが、その頃の私は、ウツ症状や、自律神経失調症、自己免疫疾患など難治性のものや、難病に属する疾患にアプローチできることこそが、鍼灸の真骨頂と考えていて、肩こりや腰痛などの運動器疾患に対する治療を一段低く見ていたため、栗原先生の行動が浅ましいものに見えました。
そうこうしているうちに、栗原先生は活法のセミナーを開催するようになりました。ひたすら鍼灸術を追求する孤高なイメージとはかけ離れた行動に、「ついにセミナービジネスに手を出したのか?」と、ますます不信感を抱きました。
片思いしていた人に急に恋人が出来て、雰囲気が突然変わってしまった時のような困惑を私は抱きました。困惑が生み出す不安を埋めるために、「お金に目がくらんだのか?、変な宗教的なものにハマっちゃったのか?」と、勝手な憶測をすることで、気持ちの穴をふさぐ事しか出来ませんでした。
それ以来、「鍼灸師のツボ日記」とは距離を置くようになりました。
変化と進化
しかし、月日が経ち、状況が変ると、「裏切られた」という思いは、誤解が生んだ妄想だったことがわかりました。
開業し、鍼灸一本で勝負する日々を送るうちに、私は、運動器疾患へのアプローチが どれほど重要であるか、身にしみて理解しました。そして、既存の鍼灸法でその分野に挑んでも、他の治療法より抜きんでた結果を出すことが出来ない現実に打ちのめされました。
廃業寸前の窮地に立たされてはじめて、活法に出会った時の栗原先生の気持ちが理解できたのです。
栗原先生の状況も変化していました。
まず、活法をヒントに、新しい鍼治療法である「整動鍼(このころは古武術鍼法と言いました)」を生み出し、公開し始めたのです。
そして、栗原先生は2013年、品川に新たな鍼灸院「カポス」を開院しました。この理由が仰天で、栗原先生は整動鍼が本当に技術として有効なら、自分以外が使っても同じ効果が出なければならないと考え、その検証のために鍼治療専門の「カポス」を開院したのです。こんな開業理由聞いたこともありません。
東京都港区-品川駅の鍼灸院|はりきゅうルーム カポス
これらの動きをふまえて振り返ってみると、活法に出会って以来の栗原先生の意図が透けて見えてきます。
すべては、鍼灸技術の追求のためだったんだなぁ、と。
活法という強力な治療法を分析し、身につけ、自分自身に落とし込むことで、鍼の技術に応用し、進化させるために必要な道のりだったのだと。
活法に出会う前も、後も、栗原先生の姿勢は全くぶれていなかったのです。臨床経験も無く、頭でっかちだった私の穿った見方が目を曇らせていただけでした。
求めていた物のありか
・運動器疾患に強い
・術者にも患者さんにもはっきりわかる即効性
・他の治療法にはない特徴がある
・出来るだけ早く結果が出せるようになる
・近隣に熟達した競合が存在しない
「整動鍼・活法」は私の理想にあまりにも合致しました。そのため、逆に、だまされているのかもと不安になりました。治療法のセミナー関係は、どれも全てが治るような謳い文句で宣伝されていて、詐欺まがいのものが多いのです。
しかし、体験してみなければ、何事もわかりません。
このまま、座して死を待つくらいなら、リスクを冒しても世界に一つだけの宝物を探したいと思いました。
ダメだったら、他のものをまた探せばいいのです。
そう考え、私は、開催時期が一番近かった「整動鍼・活法」の一日体験会に申し込みました。
つづく、、、(11)
札幌市白石区の鍼灸院:快気堂鍼灸院白石
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