(5)のつづき
さらば地球よ、旅立つ船は
人類滅亡、ではなく、つぶれかかった鍼灸院の危機を救うため、この世のどこかにある世界でたった一つの秘宝「快気堂鍼灸院白石でなければならない理由」を求めて、宇宙船「快気堂号」の新たな冒険が始まりました。
母なる星「経絡治療」を離れ、遙か彼方宇宙の果てまでを目指すかのような、心細い旅ですが、感傷に浸っている暇はありません。ぐずぐずしていると、どんどん運営資金が減っていき、航海もままならなくなります。
巨大な帝国からの使者
残された時間はあとわずか。
しかし、施術宇宙は広大です。こんな中から秘宝を見つけられるのか?そもそも秘宝は存在するのか?
滅亡までのカウントダウンが無情にも進む中、「快気堂号」のクルーに焦りが見え始めます。
そんな時です。機械帝国の使者と名のる男が快気堂号を訪れました。男の名は「医療機器メーカー営業担当(略して営業の人)」。
実は、営業の人の快気堂号への接触は、今回が初めてではありませんでした。
機械帝国の威容
機械帝国は医療業界のなかでも強大な勢力を誇っています。鍼灸関連商品のカタログを見ると、鍼のページは10数ページなのに、電気治療器や酸素カプセルなどの機械関連は50ページ近く割かれていて、その影響力の大きさがわかります。
機械帝国と友好関係を結ぶ治療院や病院も多く、強い友好関係の印として、高額な最新機器を一番の目玉にしているところも少なくありません。
開院以来、快気堂鍼灸院白石は機械帝国と距離を置いてきました。院を作ったときのコンセプトが「手のぬくもりを大切にする」だったからです。
このコンセプトは、手作りの鍼灸院、手作りの内装、鍼灸師の手技にこだわった施術という形で実を結んでいました。そのため、機械帝国の住人達とはそりが合わなかったのです。
ただ、全く機械帝国の住人がいなかったわけではありません。
開院初期は、
Dr.メドマー(空気圧で足のマッサージをする機器)
吸い玉(カッピング)用機器、
鍼にも電気が流せる電気パルス治療器、
身体を優しく温める遠赤外線照射器
などがいました。
開院に当たって、鍼だけでは集客できないと心配した先輩達のアドバイスを素直に受け入れて購入しました。
しかし、せっかく経絡治療で経絡を整えてるのに、これらの機器を使うと、経絡がまた乱れるんじゃないかと考え、ほとんど使うことなくお別れしました。
決して安い商品ではありませんし、人気のある機械達です。使われることなくリストラされた経験はほとんどないと思います。彼らは、プライドが傷つき、忸怩たる想いを抱いたに違いありません。
機械帝国の逆襲
手のぬくもりにこだわったものの、3年目を迎え、快気堂号は沈みかけていました。
リストラされた機械達は、ほら見たことかとほくそ笑んだかもしれません。
しかし、そんな素振りをおくびにも出さず、機械帝国の営業の人は、親身な態度で私の窮状を案じてくれました。
「あなたを救いたい」営業の人が潤んだ目で、一枚のパンフレットを私に差し出しました。その姿は、まるで救い主にさえ見えました。
パンフレットには、追い詰められた私にとって、ピカピカと煌めくような、魅力的な文言が並んでいました。
・有名な医師が開発した。
・数多くのペインクリニックや整形外科などに導入され、総合病院の9割が使用している。
・プロスポーツの現場でも活躍している。
・線維筋痛症に効果がある。
・筋肉や関節の痛みを取り除くことが出来る。
・星状神経節へ照射することにより、自律神経の調整が出来る。
・頭痛、五十肩、めまい、腰痛、膝痛、手足の血行障害、不妊、がん、、その他数え切れないくらいの疾患の治療に使われている。
・あまりにも強力なので、厚生労働省に宣伝を制限されている。
・メディアにも多数取り上げられている
・光を使うので副作用はない。
などなど。
医師が保証し、病院でも使われているとなると、信頼性もあり、効果も間違いないのか?もしかしたら、これが探し求めていた秘宝への鍵なのかも?
意外に早く快気堂が救われるヒントが見つかったかもしれないと、私の胸は激しいビートを刻みました。
その機械帝国から来た救世主の名は「スー◯ーライザー」と言いました。
このスー◯ーライザーとの出会いと別れが、快気堂鍼灸院白石復活へのきっかけとなっていきます。
つづく,,,,,(7)
札幌市白石区の鍼灸院:快気堂鍼灸院白石
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