鍼灸師として駆け出しの頃、超有名な大先生に
と質問をしたことがあります。
大先生の三作ある著作を穴が空くほど読み込んだはずなのに、緊張してそんなことしか聞けませんでした。
大先生はとろけるような優しい笑顔でこう応えました。
「結局は人柄だよ。人間性を磨きなさい。」
そこから、私の人間性を磨く紆余曲折のチャレンジが始まりました。
Contents
人間性を磨く方法を探せ
憧れの人に、凄くいいことを言われて、私はポワーっと夢心地になってしまいました。
私の悪い癖です。
「愛こそ全て」とか「世界平和」とか「自由への疾走」とか素敵な言葉に触れると、気持ちよくなってしまい、肝心なことを忘れてしまうのです。
私は、大先生にこう聞くべきだでした。
「どうやったら人間性を磨けますか?」と。
人間性を磨く方法
一人前の鍼灸師になるために、人間性を磨きたいと思いましたが、方法が分かりません。無い頭を絞って、何となく思いついたのは、こんな感じです。
人間性を磨く方法
- 本を読む
- 手本になる人に学ぶ
- 人間性を向上させる講座を受ける
臨床の傍ら、この3つの取り組みに没頭しました。鍼灸師としてのスタートが遅かった(34歳)自分は、とにかく早く一人前になりたかったのです。
本を読む
高い人間性を手に入れるためには、他人への共感力を磨く必要があります。人間性を評価するのは他人だからです。
共感力を磨くのに、読書は最適です。
読書をすると、自分とは違う人間の物語を体験することができます。他人の物語が自分に蓄積していくと、共感力が高まっていきます。
物語が重要なので、ビジネス書よりも小説の方が役に立つ気がします。
手本になる人に学ぶ
次に、有名鍼灸師の本やDVDを読みあさり、有名鍼灸師が出席する講演やイベントに入り浸りました。
有名鍼灸師の、人への接し方、言葉の選び方、患者さんへの想いに数多く触れ、
と勉強になった一方、
と思う先生も少なからずいました。
鍼灸師の成功に、人間性が高いことが必ずしも必要ではない事を私は学びました。
人間性を向上させる講座を受ける
人間性が向上しそうな、講義にも参加してみました。心理学の講座、マナー講座、接客講座、人の心を掴むトーク術講座などのほか、いわゆる自己啓発系のセミナーにも行ってみました。
カリスマ先生達のオーラに触れて、「もう、全て身を任せたい!!」と憧れを通り越して、信仰心のようなものが私に芽生えました。
しかし、ここで疑問が生じます。
カリスマ性は患者さんにとって危険?
医師に強い依存心を抱きすぎると、患者さんは治らなくなるということが医学の世界でも問題になっています。
また、カリスマだけど腕の悪い先生に当たると、他にもっと良い方法があるかもしれないのに、患者さんは通い続け、治るチャンスを失ってしまう危険性があります。
方法の他に必要だったもの
分からなくなったので、原点に戻って考えてみました。
私は大事な事を見落としていたのです。
私は人間性を磨く方法ばかりに目を奪われていました。しかし、事をなすには手段の前に目的をはっきりさせることが必要だったのです。
鍼灸師としての在り方
人間性を磨くのはなぜか?
それは、鍼灸師として成功したいからでした。
では、鍼灸師としての成功とはなんでしょう。
もちろん経済的成功もあると思います。でも、それだけなら、証券会社に勤めた方がましですし、カリスマ先生に疑問を抱くこともないでしょう。
私にとって鍼灸師としての成功とは、できるだけ多くの患者さんに鍼灸で幸せになってもらう事です。
宗教のように、カリスマ先生の信者になって、治らないけど心は満たされて幸福って考え方もあると思います。
でも、自分の考える幸福には、自由が必要です。
「自分の人生を自由に楽しめる」のが、私の考える幸福です。
自分の考える幸福のイメージから、目標がはっきりしてきました。
できるだけ多くの患者さんに、辛い症状から自由になって、自分の人生を楽しめるようになってもらう。究極は通院の必要性からも自由になってもらいたい、というのが自分の鍼灸師としての目標になりました。
あの日の私は、大先生にこう聞くべきでした。
没頭
目標を達成するために、臨床で患者さんと向き合う日々が続きました。
「症状からも通院からも、できるだけ早く自由になって貰うためには、どうしたらよいか」を問い続けた結果、何よりも自分の施術技術を高める事が重要であると痛感するようになりました。
私は、目標を叶える施術方法を求めて、様々な所を巡りました。
そして、整動鍼に出会いました。
整動鍼は「即効性があり、再発も防げる」という特徴を持っています。
「できるだけ早く患者さんに施術を卒業して貰い、通院の必要性からも自由になって貰う」という自分の理想を整動鍼なら実現できるのではないかと強く感じました。
整動鍼の技術習得に没頭すること数年、今では講師を務めるまでになりました。
ただ、没頭し過ぎて、いつの間にか、人間性を磨くことをすっかり忘れていました。
このままじゃまずい!?と思いながらも、臨床や技術指導、子育てで時間をイタズラに浪費する日々が続き、悩みは深まっていきました。
人格者の一言
そんなある日、一人の先生が整動鍼セミナーにいらっしゃいました。
その先生は、臨床歴数十年の大先輩で、地元の患者さんの信頼が熱いのはもちろん、全国の鍼灸師から慕われる素晴らしい人柄の持ち主です。
自分から見ると憧れの大先輩、整動鍼を遠方から学びにくることにも驚きましたが、セミナー受講後に発言された一言に衝撃を受けました。
「いやー、この施術法を知らないでやってたなんて、今までの患者さんに詐欺をやってたみたいなもんです。」
と私は圧倒されました。
そして、気付いたのです。
どんなに臨床歴があっても、どんなに実績があっても、どんなに技術があっても、常に患者さんに寄り添い、患者さんにとって必要なものを求め続ける姿勢が、この先生の人間性を形作ってるのだと。
人間性を磨くのは、日々の臨床で患者さんの声を聞くことから始まるんだと気付きました。
月並みな言い方ですが、全ては患者さんが知っているのです。患者さんから常に学ばせて貰うのです。それが、人間性を磨くスタートラインなのです。
ボーイズ・オン・ザ・ラン
現在、私は日々の臨床の他に、医師と共同で鍼施術の効果を科学的に検証しています。
効果が評価されて、病院内に鍼治療センターが創設され、主任鍼灸師として指導と臨床にも当たっています。このシステムは全国に拡大する予定です。
また、現役Jリーガーをはじめとして一流のアスリートに協力して頂き、スポーツの分野での鍼灸の可能性についても研究を開始しています。
整動協会の副代表としても、全国の鍼灸師を繋げ、技術の研究・向上・普及にも邁進しています。
一見、支離滅裂に見えますが、この活動の根本には、患者さんの声があります。
できるだけ多くの患者さんに自分の自由な人生を楽しんで貰うために、色んな事忘却して色んな事に取り組んでいます。
「人間性を磨きなさい」
大先生、あれ以来、ぼくは、この言葉の意味をもとめて悩みに悩んで鍼灸師の道を歩んできました。
そして今、答えを得られたかは分からなけど、悩まなくはなりました。
これでいいんですかね。
次に会えたら質問させてください!!
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