北斗病院での一年間を振り返ることで、鍼灸師と病院のコラボレーションがもたらす未来を紹介する企画代4弾です。
研究からスタートしたコラボレーションは、鍼灸による医療改革を目指すプロジェクトMIRAIへと発展し、実現するための組織としてJASTAC(日本鍼治療標準化学会)が創設されました。
JASTACが生まれ、さらに広がりを見せるプロジェクトMIRAIの中身について、今回はご紹介していきます。
Contents
鍼治療センターの創設
病院内で鍼治療の提供は既に開始されていましたが、希望者が多いので、場が必要になり、北斗病院内に鍼治療センターができました。
鍼治療センターでは、研究と研修を兼ねた施術が行われています。
利用は、北斗病院の職員さんと、北斗病院の患者さんで、担当医からの紹介があり、研究と研修への協力に同意して頂いた方に絞っています。
対象を絞っているのは、法律的な問題です。
現行の法律では、鍼灸を病院内で自由に提供する事ができません。患者さんのためにも、法律の改正は取り組むべき問題ですが、時間がかかります。
そこで、研究目的として鍼治療を提供することにしました。
人に対する医学研究に必要な、厚生労働省が定める倫理委員会の許可はとれたので、研究目的として鍼治療の提供がスタートしています。
鍼治療センターの内容
患者さんの対象を絞っているにもかかわらず、鍼治療センターは予約枠を越える人数の利用があります。
鍼治療センター開設当初、北斗病院内の医師が何人も施術を受けに来てくれました。効果を体験した医師が、患者さんを紹介してくれるので、予約枠はどんどん埋まっていきます。
病院内の医師・看護師・薬剤師・事務員など職員さん達の利用も少なくありません。病院の仕事は激務ですからね。
多い症状は、紹介して頂く医師の科の影響で、ガンの痛み、抗がん剤の副作用(しびれ、冷え感、吐き気、咳など)、手術後に残る痛みや違和感など、ガンに関連するものが多くなっています。
研修の場としての鍼治療センター
鍼治療センターは研修システムのプロトタイプでもあります。
現在、倫理委員会で研究者として登録を認可された鍼灸師4名が、私の指導のもと、鍼治療センターで臨床に当たっています。
参加鍼灸師
臨床の場で、症状に対する見立て、ツボの選穴、ツボの位置を指導役の鍼灸師に聞ける環境の効き目は抜群で、参加メンバーはメキメキ実力を上げてきています。
ここで育った鍼灸師は、次の世代の指導鍼灸師を目指していきます。
2018年12月より、埼玉県の熊谷総合病院でも、臨床研修がはじまりました。こちらは、整動協会代表の栗原誠先生が指導をしています。
高まる鍼灸師の需要に応えるため、結果を出せる鍼灸師の育成は最重要課題です。
派遣のプロトタイプ
鍼灸師の活躍の場を拡げるための派遣プロジェクトも進行しています。
2018年9月、加藤容崇先生(慶応大学医学部特任助教)に呼び出され、札幌のとある病院グループに行ってきました。
目的は、鍼灸師派遣のテストです。
病院グループの職員で希望される方に、鍼治療を提供して、「派遣で鍼灸師が結果を出せるのか?」「鍼灸師の派遣を必要と思ってもらえるか?」という点をテストしました。
加藤先生のプレゼン力により、結構な数の職員さんが施術を希望してくれました。
結果を出すことにより、希望者は続々と増えていきました。最終的に1日で40人の方に施術を提供し、全ての方にホームラン級の結果を出すことが出来ました。
看護師長の報告を受けたグループトップの医師に「鍼灸師の派遣が必要だ」と言って頂けました。
鍼灸師の派遣に確かな手応えを掴みました。
ブースタープロジェクト
プロスポーツ選手との共同プロジェクトもスタートしています。
鍼でアスリートのパフォーマンスをブーストすることが出来るのか?前例のない挑戦ですが、A-bank Hokkaido代表・曽田雄志さんの協力により、現役Jリーガーを巻き込んだ希有な研究プロジェクトとなっています。
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鍼灸師が、Jリーガー・医師・理学療法士と一緒にたくらむ新たな試みとは!?
2018/12/13、私と整動協会の栗原誠代表、そして札幌鍼灸師チームは、帯広市にある十勝リハビリテーションセンターに集結していました。 鍼の研究に協力して頂いている慶応大学医学部特任教授の加藤容崇先 ...
また、帯広畜産大学の村田浩一郎准教授にもご協力を頂いています。
村田先生は、スポーツ科学の専門家であり、全日本クラスの体操指導者です。村田先生が指導する体操選手のパフォーマンスに、鍼施術がどのような影響を与えるかの研究もはじまっています。
地域スポーツへの貢献
十勝スカイアースとも協力プロジェクトを進めています。
十勝スカイアースとは、北斗病院がある十勝平野で、Jリーグ入りを目指す社会人サッカーチームを中心として、地域に総合スポーツクラブ創設を目指している組織です。
代表取締役である金沢宗一朗さんに、鍼治療センターで実際に鍼を受けて頂き、有用性を確認して頂きました。
Jリーグ入りを目指すチームに鍼治療がどんな貢献が出来るのか。これもまた、ワクワクするプロジェクトです。
多くの鍼灸師の参加
この1年、たくさんの鍼灸師が、北斗病院を訪れてくれました。
鍼灸師の未来を切り開くためには、多くの鍼灸師の協力が欠かせません。
伝え聞くのと、実際に見るのとでは、随分と印象が変わるものです。
札幌・室蘭など道内からはもちろん、東京、群馬、埼玉、神奈川、愛知、大阪、、、と幅広い地域から、帯広に来て頂けました。
ほとんどのみなさんから「もう一度行きたい」との感想を頂きます。
実際、毎週のように参加しちゃってる方もいます。
鍼灸師が、病院内で医療の主役の一端をになっている状況が刺激になるようです。
プロジェクトの要は鍼灸師です。医師や、研究者からの評価も凄く嬉しいですが、鍼灸師からの理解と応援が何よりも力になります。
鍼灸をめぐる冒険は、さらなる世界へ
この一年、鍼灸をめぐる冒険は、予想も出来ない展開をみせました。
世界の大秘宝を手にするくらいの、途方もないチャレンジが連日のように繰り返されています。
はじめは加藤先生・鴫原先生と3人だったチャレンジ、今では、多くの仲間達が力を貸してくれています。
現場にいる私でさえ、信じられないスピードで鍼治療が医療の壁をぶち壊していってます。
しかし、鍼治療の真の可能性を考えると当然のことかもしれません。そして、まだまだ加速していくことでしょう。
鍼灸師のみなさん、鍼灸師の未来は光り輝いています。
鍼灸治療を必要とする患者さんは、世界中に溢れています。
鍼灸師の力で、世界を救いましょう。
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