4)鍼灸治療の医学的根拠
EBM(根拠に基づいた医学)という言葉をよく聞きます。医療が根拠に基づくのは当たり前じゃないか、と思うかもしれませんが、医療の世界で、この考えが提唱されたのが1990年で、意外と最近のことなのです。
医学的根拠に基づいた医療(EBM)はなぜ重要視されているか?
それまでは、医師でさえも、先輩にそう教えられたから、とか、みんながそうやっているから、昔からそうしているから、との理由で治療法を選択する、経験主義的な面が少なからずありました。
しかし、そのようなやり方では、本当にその治療法が最良の選択だったのか、検証することが困難です。そこで、EBMの考え方が提唱され、急速に広まりました。現在、医師が治療法を検討する場合、EBMのデータが不可欠となっています。
EBMは何に基づいているか?
では、EBMの根拠とは、どんなものをいうのでしょうか?
治療を選択するとき、重要なのは、有効である確率です。それぞれの治療法の有効である確率を比較することで、最善の選択ができるようになります。
この有効である確率を出すための試験に、RCT(ランダム比較試験)があります。
RCTは、被験者に偏りができないように、また、効果への精神的な影響を排除する工夫がされており、治療法の普遍的な有効率に近いデータを求めることができます。
試験結果は論文化され発表されます。さらに、多くの論文を分析し、専用の関数に当てはめて、より普遍性に高いデータを求める作業をメタアナラシス(MA)と言い、その結果が記された論文をシステマティックレビュー(SR)と言います。
世界で最も信頼性の高いSRを発表し、データベース化している機関にコクランライブラリがあります。
つまり、コクランライブラリで評価されれば、EBMの根拠として、十分な信頼性があるとされています。
医学的根拠に基づいた新久の評価
では、コクランライブラリで鍼灸はどのように評価されているのでしょうか?
コクランライブラリで取り上げられている鍼灸治療に関するSRは2015年時で50本。
そのうち、有効とされているものは以下のようになります。
コクランライブラリで鍼灸の効果が認められている疾患 |
線維筋痛症 |
労働者の痛み管理 |
月経困難症 |
関節炎 |
緊張型頭痛 |
化学療法による嘔吐 |
肩痛 |
関節リウマチ |
これに加えて、有効だが効果的とまで言えないものとして、骨盤位(逆子)が挙げられています。
残りは、結論がまだ見出せないものとなります。
治療効果に関しては、医学的検証結果が全てではないと私は考えます。しかし、医学的に根拠があるとされる鍼灸が有効な疾患を知っていることは、治療を判断するとき、有用な情報となります。
札幌市にある快気堂鍼灸院白石では、症状に悩む患者さんの一刻でも早い改善を目指します。そのために、常に知識をアップデートし、洋の東西を問わず、最高の治療を選択できるように、日々努めています。