慢性上咽頭炎の症例
慢性上咽頭炎の症例004
症状と来院まで
半年前にコロナにかかってから、鼻の奥に違和感があり、気管が痛い感じがする。倦怠感や、ゆらゆらしためまい、悪寒、かなしばりの様に起き上がれなくなるときがある。手足のしびれを感じるときがある。など、突然起こる自分ではよくわからない症状に困り、自律神経の問題かと思った。上咽頭炎が自律神経に関係することを知り、ネットで検索して来院した。
来院者
性別:女性 年代:30代
通院期間・通院間隔・通院回数
通院期間:2024年2月〜5月
通院間隔:週1回
通院回数:14回
施術と経過
鼻の奥の違和感の場所は、鼻の奥突き当りより少し上。気管は喉仏の下ぐらいが痛い感じがある。上咽頭炎やめまい、自律神経症状の原因の多くは首のコリが多いので見ると、うなじの下がかなり緊張してかたく張っていた。これに対してふくらはぎにあるツボに鍼をすると張りが緩和した。お腹に触れると下腹部に痛い箇所があった。首のコリはお腹の緊張とも関係するので、これに対しては足のスネのツボに鍼をすると痛みが軽減した。気管の痛みに対しては、喉仏に関係する手首のツボに鍼をして初診は終了。2回目は3日後に来院、しびれやめまいが前に比べて少し良くなっていた。5回目までは週2回ペースで、初診と同じ箇所にコリがあったので主にはじめと同じツボを使用。この時点で疲れにくくなってきたと感じ、腕のしびれるラインが真ん中辺りということがはっきりしてきた。気管の痛みは変化なし。しびれのラインに対応する背中(ここは呼吸器系との関連が深い)に鍼をした。ペースを週1回にし、6回目。気管の痛みがあまり気にならないとのこと。13回目でめまい、しびれ、鼻の奥、気管の痛みがなくなり、14回目で経過が良かったので終了した。
使用した主なツボ
承山R 足三里RL 列欠R
まとめ
コロナ罹患後に現れた原因のはっきりしない不調は、自律神経の乱れや首の深いコリ、お腹の緊張が複雑に関係していることが多い。今回のケースでも、全身を丁寧に観察しながら調整を重ねることで、少しずつ体の反応が変わり、最終的には気になっていた症状がすべて改善へと向かった。同じような不調で悩んでいる方にも、一つの参考になれば幸いです。
慢性上咽頭炎の症例003
症状と来院まで
夏に風邪をひいてから、嘔吐してしまうほど激しい咳が続き、夜も眠れない日が続きました。少しずつ症状は軽くなったものの、横になると喉の奥に鼻水が流れ込むようなイガイガした違和感があり、咳が出てしまう状態が残っていました。
そんな中、お子さんの風邪がうつったのか、喉の奥(上咽頭)に強い痛みと発熱が現れ、耳鼻科を受診。そこで初めて「慢性上咽頭炎」と診断され、**Bスポット療法の説明を受けましたが、「実際に受けるべきかどうか」「他に体に合った方法はないか」と考え、当院にご相談くださいました。
来院者
性別:女性 年代:40代
通院期間・通院間隔・通院回数
通院期間:2024年11月~2025年3月現在
通院間隔:週1回~2週1回
通院回数:12回(2025年3月時点)
施術と経過
お身体を確認させていただいたところ、首の5番目・6番目の骨(頚椎)周りに強いコリと痛みがありました。この辺りの緊張は、鼻や喉の調子に深く関係しています。また、背中の真ん中(胸椎3~7番あたり)にも硬さがあり、これらは咳の原因や、鼻の中に熱がこもることと関わりがあります。
こういったコリがあると、鼻の中の熱がうまく外に逃げず、鼻水がスムーズに排出されなかったり、喉に流れて咳が出たりします。
初回の施術では、まず「体の熱を冷ますこと」を優先しました。発熱後で、まだ炎症が残っている状態と考えたためです。
- 腰のツボに鍼をして、首や肩のコリをゆるめることで、鼻の熱を外に逃がしやすくしました。
- その後、首の骨に関係する足のツボにも鍼をすると、肩甲骨の間がゆるみ、鼻の通りが良くなった感覚があったそうです。
- 最後に、炎症に関係する小指の付け根にあるツボに鍼をしたことで、「上を向くと首に痛みがあったのが、スムーズに動かせるようになった」とのお声がありました。
2回目の来院時には、「喉の奥がちゃんと閉じてきた感じがして、痰も出しやすくなった」「頭痛もなくなった」と、いくつかの症状が改善。ただ、まだ咳が残っていたので、前回と同じツボに加えて、腕のツボにも鍼をしました。その後は咳の回数が少なくなってきました。
3回目から6回目までは、体にしっかりと「ゆるんだ状態」を覚えさせるため、同じ施術を継続。
7回目の頃には、「咳はほとんど出ない。痰も夜に少しからむくらいで、だいぶ楽」とのこと。
8回目以降は、日常生活に支障が出ることも少なくなってきたため、施術の間隔を2週間に1回に。
12回目の現在は、夜に咳で起きることもなく、よく眠れるようになりました。ただ、疲れがたまると首や肩甲骨のあたりにコリが出やすいので、様子を見ながら、施術の間隔を空けていく予定です。
試用したツボ
胞肓LR、足三里LR、尺沢LR
まとめ
出産や引っ越しなどでしっかりと休めない時期が続くと、どうしても体の免疫力が落ちてしまい、風邪や発熱のあとに症状が長引きやすくなります。今回の患者様も、育児に追われてご自身のケアが後回しになっていたことで、最初の夏風邪がしっかり回復しきらないうちに、再び風邪を引いてしまい、結果的に喉の奥(上咽頭)の炎症が悪化してしまったと考えられます。
回復がスムーズに進んだ要因のひとつは、Bスポット療法を始める前にご相談いただけたことです。Bスポット療法は、急性期には効果が期待できますが、慢性的な炎症がある状態で繰り返すと、かえって粘膜に刺激を与えすぎて悪化させてしまうこともあります。今回の患者様の場合、症状の経過から慢性化が疑われたため、まずは当院での鍼灸治療に専念していただくことをおすすめしました。
また、施術後の「小さな変化に目を向けていただいたこと」も大きなポイントです。
「まだ痛みがあるかも」と不安を探すのではなく、
「咳の回数が減った」
「痰が出しやすくなった」
「体がポカポカした」
「気持ちよく眠れた」
といった前向きな変化に注目していただくことで、自然と体の回復力も引き出されていきました。
今後もお身体の状態に合わせながら、無理のないペースでケアを続けていけるようサポートしてまいります。
慢性上咽頭炎の症例002
症状と来院まで
新型コロナウイルスに感染した 7ヶ月後 から、喉に痰がへばりつく ようになり、不快感を感じるようになりました。
病院を受診し 痰を出しやすくする薬 を処方されましたが、症状は変わらず。再度病院で診てもらったものの 「特に異常はない」と言われ、経過観察 となりました。
その後、5月ごろから口の中がペタッと乾燥するようになり、夜中には 舌がベリベリと張り付くような感覚 も出てきました。さらに、常に舌のピリピリ感とネバつき を感じるようになり、ますます気になる状態に。
また、喉にドロッとした痰がへばりつく ようになり、違和感が続きました。そのため、1分~5分に1回は咳払いをしてしまう 状態に。
痰が出るときには、食べたものが痰に混ざって出てくることもあり、不快感が強い という状況でした。
来院者
性別:女性
年代:40代
通院期間・通院間隔・通院回数
通院期間:3ヶ月
通院間隔:週2回〜月1回
通院回数:11回
施術と経過
1回目から4回目
普段から首や肩のこりを感じており、特に上を向く動きがしにくい状態でした。また、食いしばりの影響で顎の筋肉が硬くなっていました。
そこで、まずは 上を向く動きを改善 し、顎まわりの筋肉を緩める施術を行いました。
鍼をすると、首の動きがスムーズになりましたが、喉の症状に関係するツボが肘にあり、この方は仕事で腕をよく使うため、何度も繰り返し緩める必要がありました。
施術後の変化
- 痰の量が減り、咳払いの回数も少なくなった。(1分に1回 → 1時間に1回くらいに減少)
- 家族からも「咳払いが減ったね」と言われた。
- 口の渇きや舌のピリピリ感の変化は感じなかった。
5から7回目
首や肩のこりがほぐれた状態が維持できるようになり、リラックスした状態で来院されるようになりました。
このタイミングで、顎まわりの筋肉をさらに緩め、唾液が出やすいようにする施術 を追加しました。
その後、8回目で舌のピリピリがなくなり、11回目で良い状態に落ち着いたので治療を終了しました。
慢性上咽頭炎の症例001
お客様
40代 女性 事務職
来院
2022年9月
症状と来院理由
来院1年前より後鼻漏がひどくなる。食べたものが鼻の奥につまるため、ゼリーしか喉を通らなくなる。体重が著しく減少。耳鼻科、脳神経外科では異常なしと言われる。耳鼻科を何件かまわったところ、慢性上咽頭炎と言われ、Bスポットを開始。2〜3ヶ月でご飯が食べられるようになったが、その後、もとに戻ってしまう。来院時は耳の近くのつまり感が強く、思考力と記憶力が低下し、息苦しさや動悸が強いため休職中。仕事の復帰を目標に来院。
施術内容と経過
<初診>
触診すると、上咽頭の熱が抜けるのを妨げる首のこりが強かった。手、脚のツボを使い首のこりを緩めた。
<2診目>
野菜は食べられるようになったが、耳のつまりが気になる。歯磨きをすると音が響く。
上咽頭の熱を抜くとともに、耳のつまりのもととなる顎のコリを手のツボに鍼をして緩める。
<3診目>
飲み込みづらさは解消。耳のつまりも和らぐ。引き続き、肩と顎のコリを緩める。
<4〜7診目>
症状の緩和が見られ、息苦しさや動悸の不安も無くなってきた。「仕事に復帰する気力が出てきた」とのこと。
<8診目〜>
仕事に復帰。ストレスがかかると首肩の不調が出るが、鍼をすると回復。月に1〜2回に通院頻度を落として、良い状態を保っている。
主に使用したツボ
足三里、委風、養老
考察
休職せざるを得ないほど重度の自律神経症状が出てしまっていた。慢性上咽頭炎がその根本にあった。病院の検査では上咽頭に貯まる熱に対処することができないので、対応が限られてしまう。そうこうしているうちに悪化してしまった症例。
首や顎のコリに注目し、手脚のツボを使ってコリを緩めることで順調に回復が見られた。
仕事に復帰するという明確な目標があったのも、早期の回復につながったと考えられる。