1)WHOが認めているというのは注意が必要
鍼灸の根拠の話題になると、「WHOが鍼灸の効果を認めている」という言葉が良く出てきます。
ついこの間まで、日本鍼灸師会のサイトに「WHOが鍼灸の効果を認めている症状」が掲載されていましたし、鍼灸院のサイトも同様のことを記載しているところが多くあります。
しかし、注意しなければなりません。そこに記載されている内容は、1979年に発表されたものなのです。さらに、驚くことに、記載されている症状は、30数年間、一つも追加、あるいは、削除がされていないのです。
医学的データというのは、日進月歩です。正しいと信じられていた治療法が、数年後、実は悪化させる要因になっていたと判明するなんてことが多々あります。そのため、厳しい追試や臨床データの分析が行われ、常に、データは更新されていく必要があります。そのため、新しいデータほど信頼性が高いとされます。
この1979年の鍼灸に関するWHOの発表は、1970年代の世界的な鍼灸ブームのあおりを受け、WHOが慌てて作ったものです。そのため、実験論文やデータの分析によって作成されたわけではなく、鍼灸師たちの経験談を元に作られました。
経験談で良いのなら、なんでもありになってしまいます。
中国政府の政治的介入もあったと言われており、元々予定していた症状より多くの適応症状が追加されたようです。
つまり、このWHOの発表とされる適応症状のデータは、全く科学的、医学的根拠に乏しい発表だということです。そのため、科学的、医学的な検証することさえ、できない代物なのです。
このような怪しげな発表に頼らずとも、近年、しっかりとした鍼灸の科学的、医学的研究成果が続々と発表されています。なのにもかかわらず、30数年前のWHOの発表にぶら下がり続ける姿勢には、医療者として問題があると思います。
科学的・医学的根拠が必ずしも治療に必要というわけではありませんが、札幌市の快気堂鍼灸院白石では、患者さんにできるだけ良い治療を提供したいという思いから、院長の医学部での経験を生かし、科学的・医学的根拠の新しい情報に常に触れるように心がけ、学んでいく姿勢を大切にしています。
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