胃腸症状の症例
患者
60代 女性
来院
2018年9月
症状と来院理由
若いときから便秘で悩んでいた。ここ数ヶ月特に便秘がひどくなり、非常にストレスである。漢方薬を飲んでいるが便秘には効果が感じられない。バセドウ病があり、ストレスがたまると異常食欲になるのも悩みである。食後30分経たずに胃がムカムカする。インターネットで症状を改善したいと調べ、来院。
治療内容と経過
1診目 腹診をしたところ、胃腸の調子に関わる所に強い緊張が2つあった。対応する足のツボに鍼をしたところ、腹部の緊張がとれ、「身体全体が軽くなった」とのことで施術を終了とした。
2診目 前回施術後、「胃もたれもなく、三日ほど続けて排便もあった。」とのこと。同様の治療を5診目まで繰り返す。「便秘も改善し、異常食欲も落ち着き、食後の胃のムカムカも起きなくなった、非常に調子が良い」とのことで、状態も安定したため、施術を終了とした。
使用した主なツボ
上巨虚R、曲泉R、百会
まとめ
長年にわたる便秘も腹部の緊張を緩和させることで、短期で改善する事も多い。異常食欲も身体の緊張が関与しており、緊張が抜けることで症状が出なくなった良い例である。
【YT0010896】
症例5 週に何度も下痢になる
患者
40代 男性
来院
2018年7月
症状
週に何度も下痢になる、頚肩こり、腰背部痛と色々,全体的に不調である。
妻が通院していたため、勧められ、来院。
治療内容と経過
《一診目》
下痢がちであるため、腹部を触診すると固く緊張してる部分があった。腹部の緊張をゆるめるため、足の脛に鍼をしたところ、腹部の緊張が取れ、柔らかくなり、背部も楽になった。
頚が左に向きづらく、左の頚から肩にかけて張っている。背中を触診すると,強い緊張が診られたため、対応する手のツボに鍼をしたところ,左に首を楽に向けるようになり、張りは消失した。
《2診目》
お腹の調子は1週間1度も下痢をせず、とても調子がよく、頚肩腰も快調で逆に治療していない側が気になるとのこと。同様の腹部の治療をし、終了とする。
一週間後、症状はほぼ消失していたため、予防として同様の治療をし、治療を終了とした。
同時に治療した症状
頚肩コリ、腰痛
使用した主なツボ
陰陵泉L、上巨虚L、後谿L、
考察
腹部の緊張が、腰背部痛をひきおこしていることがある。お腹の緊張を解き、調子を整えることで、腰痛や肩こりが改善する良い例である。
【YT0010833】
※結果には個人差があり、
症例4 内臓からグググっと上がってくるような吐き気。
患者
10代 女性
来院
2017年 1月
症状
2016年8月、大学のテスト前に不安に襲われ「内臓がグググッと上がってくる感じがあり、舌がつかえて、えづいた」。それ以来、半年間吐き気が止まらない。
発症後すぐに内科を受診。レントゲン、胃カメラ、エコー等の検査をするも異常が見つからず。「放っておいたら治る」と医師に言われ、ナウゼリンを処方される。1ヶ月服用を続けたが、効果が出なかった。
9月に精神科を紹介され受診。セルシン錠、ソラナックス、ジェイゾロフト、ジアゼバムと薬を処方されたが効果なし。逆に、服用するとゲップと吐き気に悩まされるので、服用を中止した。
バス・JRに乗ると不安に襲われ吐き気が強くなるため登校できず。次のテストが迫り、これをクリアしないと進級できないため、効果の出る治療法を探していたところ、父親の友人の勧めがあり当院へ来院した。
治療内容と経過
<1診目>
触診すると肩とみぞおちに強い張りがあった。特にみぞおちの右側が盛り上がるように緊張していた。手にあるツボに鍼をしたところ、即座に肩とみぞおちの緊張が大幅に緩和した。確認すると「とても楽になった。吐き気がない」とのこと。わずかに残った緊張を足のツボで調整して治療を終了した。
<2診目〜4診目>
初診後、一時的に具合が悪い時間はあったが、吐き気が無い状態が続き調子が良い。左の肩のコリが気になるとのことなので、初診と同様の治療に加え、足のツボでコリを改善した。2診目以降、学校にも通えるようになり、「友達とお話しできるようになった」とのこと。
<5診目〜>
4診目の後、調子を崩す。「生理になり子宮の痛みが強い」とのこと。触診すると下腹部に強い緊張があったので大腿部にあるツボで調整すると「すごく楽になった」とのこと。その後1週間、吐き気は全く感じず調子の良い日が続く。6診目で異常がほぼ改善されたと考え、治療を一区切りとした。
2月から始まる研修に備えるため、通院間隔を空け定期的に来院予定。
同時に治療した症状
肩のコリ 下腹部(子宮周辺)の痛み
使用した主なツボ
合谷R 築賓R 三陰交L 足五里L
考察
腹部の強い緊張が吐き気を誘発していた。
長期間改善しなかったため相当なストレスだったはずである。
初診の問診時、「手と足が震える」と青白い顔で訴え、精神の疲労度がうかがえた。施術を重ね、調子が良くなるとともに、明るさと笑顔が出るようになり「元気になりすぎて、友達がその鍼って麻薬塗ってあるんじゃないの?と言われた。」と冗談も出るようになった。この姿が本来の彼女の姿だと考える。
このような症状で、内科の治療では成果が出ず、精神科や心療内科に回され余計に症状をこじらせるケースも多々あると思われる。
そういった多くの方達に、鍼治療を一つの選択肢として認識して頂けるよう、成果を積み重ねていきたい。
※結果には個人差があり、
患者様の声
◎「もっと早く先生に出会いたかったです。」(吐き気の治療について)
症例3 吐き気を伴う胃の痛み
患者
30代 男性
来院
2016年 7月
症状
3週間前より、みぞおちの周辺が張ってムカムカし、辛いときは吐き気がする。同時に、「首から背中にかけて全体が張っていて亀の甲羅のよう」だと感じる。
過去にも同様の症状があったが、他の鍼灸院に通って調子を整えていた。今回は長引いたため胃腸内科を受診。検査では異常が無かった。胃炎と診断され、ガスモチン、プロマック、コリオパンカプセル等の薬を処方されるが効果がなかった。
インターネットで胃腸症状に明るい鍼灸院を調べたところ、当院が該当したので来院した。
治療内容と経過
みぞおちのあたりを触診すると、左寄りに強い緊張が見られた。この場所は肩の張りにも影響を及ぼすところでもある。原因と考えられる手のツボに鍼をした。鍼をした瞬間からお腹が鳴り、「お腹の緊張が取れ、動き始めた感じがする」とのこと。5分ほど経つと、みぞおちの緊張が大幅に緩んだ。
さらに触診すると、やや緊張が残っている部分があった。原因と推察される膝のツボに鍼をした。5分ほど経過すると、みぞおちの緊張が消失した。
「お腹も背中も楽になり、すっきりした」とのことなので治療を終了した。
調子を維持したいという目的で月に一回のペースで通院中。
同時に治療した症状
首から背中にかけての張り
使用した主なツボ
合谷L 曲泉L
考察
内臓の調子も体の動きに大きな影響を受ける。今回は、手や膝の動きの歪みによって発生した、みぞおち周辺の強い緊張が胃の働きを阻害し、ムカムカや吐き気を誘発していた。
レントゲンや胃カメラによる検査では、原因となる動きの問題を発見できない。
鍼治療で原因に適切にアプローチできれば、薬以上の即効性を発揮できる胃腸の不調も少なくない。
患部にとらわれることなく、大きな視点で原因を探すことが早期改善には必要である。
※結果には個人差があり、
症例2 ピロリ菌洗浄以来悪化した胃の痛み
患者
60代 女性
来院
2016年 12月
症状
数年前より「胃の調子が悪い」と感じていた。2年前に内科で検査したところ、ピロリ菌が検出され除菌療法を受けた。それ以来、胃の不快感が増した。内科では逆流性食道炎と診断された。処方された薬では症状は改善しなかった。現在は漢方薬が処方され服用し続けているが、効果は感じられない。年末年始を乗り越えられるか不安になり、ネットで見つけた当院へ来院。「横になって起きるときに具合が悪くなる」「食べてすぐ具合が悪くなる」とのこと。
治療内容と経過
腹部を触診すると胃の周辺の緊張が強い。圧すると「痛くて苦しい」とのこと。この緊張が胃の働きを阻害していると考え、関連する前腕部にあるツボへ鍼をした。5分後、先ほどと同じ部分を圧してみると全く痛みを感じないとのこと。胃の周辺の緊張も消失していたため治療を終了した。一週間後、経過を訪ねると「あれ以来調子が良く、お正月も快適に過ごせた。甘い物を少しでも食べると具合が悪くなっていたのに、栗きんとんを山のように食べたのに全く平気だった」とのこと。腕のしびれが気になるとのことで、引き続き通院中。
同時に治療した症状
腕のしびれ
使用した主なツボ
四瀆L
考察
長年苦しんだ腹痛が一度の治療で改善した例。病院の検査でピロリ菌や逆流性食道炎が発見されたが、腹痛の直接の原因ではなかったと考えられる。整動鍼は体の動きを整えるのを得意とするが、胃腸をはじめとする腹部の不調の改善にも応用可能である。この事から、胃腸の動きも体の連動性の影響を受ける可能性が示唆される。一見関連性の低そうな体の動きのクセに着目できるかが、早期改善へのカギを握っている。
※結果には個人差があり、
症例1 胃痛がきっかけとなった脇腹の痛み
患者
40代 女性
来院
2016年 12月
症状
来院二日前、夜中に胃が痛くて目が覚める。痛みが強く、体を動かすのもつらい。以前、胃けいれんを発症したことが何度かあり、それと同じ痛みを感じる。しばらくすると、胃の痛みは治まったが、同時に、左の胸から脇腹にかけて強い痛みを感じる。息を吸ったときに特に痛みを感じる。「肋間神経痛ではないか?」と不安を感じている。発症から二日経過しても痛みが軽減しなかったため、以前通っていた当院に来院した。
治療内容と経過
胸の痛みは背部が原因である事が多い。肩甲骨上を探ると強く緊張したポイントがあったので、鍼をしたところ、胸の痛みが減少し、胸の下の肋骨部分の痛みが残った。肋骨の高さに対応する背部のツボを探ると反応があったので、手にあるツボに鍼をして調整した。結果、脇腹の痛みが完全に消失した。
次に、原因となった胃の部分に触れると、強い圧痛を感じるとのこと。胃の調整をするため、腕にあるツボに鍼をしたところ、腹部の緊張が取れ、圧痛が消失した。
深く呼吸をしても痛みは出ず、「体が軽く感じる」とのことなので治療を終了した。
同時に治療した症状
なし
使用した主なツボ
天宗L 後谿L 四瀆L
考察
強烈な胃の痛みから、体の動きに捻れがついてしまい、脇に負担が集中して痛みが発生したと考えられる症例。肋間神経痛のように感じる痛みでも、原因は背部のバランスの崩れにあることが多い。患部にとらわれず、全体の連動に着目できたことで早期の改善に繋がった。
また、原因となった胃の不調も、整動鍼で調整できる。こういった胃腸の症状も、体の動きを整えると短時間で改善する例も多い。人間の内臓の働きと、体の動きの関連性が垣間見られる興味深い症例である。
※結果には個人差があり、